「仙ちゃん、元気か?」ミスターがルーキー星野仙一さんへ手渡した飲みかけのコーラ瓶
スポーツ報知
◆スポーツ報知・記者コラム「両国発」
2012、13年は楽天の担当記者だった。監督は星野仙一さん。中日監督時代などの印象で、巨人を目の敵にしていると思っていた。実際は違った。言葉の端々から、巨人へのリスペクトを感じた。
聞いて驚いたのはミスターとの思い出だ。新人ながら球宴に選ばれた1969年。ベンチで、声をかけられたという。「仙ちゃん、元気か?」。渡されたのは、栓が開いたコーラの瓶。「長嶋さんの飲みかけだったけどな。あのスーパースターの長嶋さんが、ペーペーのワシに手渡してくれた。感激したわ」。一気に飲み干したという。
「打倒巨人」の星野さんが、飲みかけのコーラで感動するとは…。ミスターの偉大さを改めて思い知った。その後、阪神での監督時代などに激励されたことにも感謝していた。現役時代を知らなくとも、長嶋ファンだった私にとって、忘れられない話だった。
長嶋さんの訃報に接し、多くの関係者が追悼した。元阪神の掛布雅之氏が、不振の時に電話をもらった話も印象的だった。ファンのみならず、ライバル球団の後輩にも慕われたからこそ「ミスタープロ野球」なのだと痛感した。
花巻東(岩手)時代、私が担当した佐々木麟太郎(スタンフォード大)は24年春、関係者を通じエールをもらった。「長嶋さんが高校時代の自分の映像も見てくださっていたと聞いて。それはうれしかったです」。見たことのない笑顔だった。
故・野村克也さんは自らを「月見草」に、長嶋さんを「ひまわり」にたとえた。長嶋さんのまいた多くの種が、今後も球界に芽吹き続けてほしい。天国で安心できるように。合掌。(野球部デスク・高橋 宏磁)
◆高橋 宏磁(たかはし・こうじ)2001年入社 プロレス、ゴルフ担当、東北支局などを経て野球部デスク。