誤情報拡散で“悲劇の現金化” 能登半島地震で「X」の「インプ稼ぎ」が現場を混乱させる…桜美林大教授が警鐘

スポーツ報知
平和博教授

 能登半島地震は発生から1か月余りが経過した現在も、さまざまな情報が発信されている。そんな中、発生当初からインターネット上での偽情報・誤情報などが現地の救助活動の妨げとなっていた。この要因となっているのが、短文投稿サイトXの閲覧数(インプレッション)を増やして収益につなげる「インプ稼ぎ」。IT関係に詳しい桜美林大リベラルアーツ学群教授の平和博氏(61)は「誤情報の拡散によって現場が混乱してしまう」と警鐘を鳴らしている。(樋口 智城)

 元日の地震発生の数時間後。X上に一つの投稿が上がった。「津波到達になった瞬間NHKのアナウンサーがすごい怒鳴(どな)ってる! 危機感の伝わってくるアナウンスなので北陸新潟能登半島の方逃げてください」。だが、メッセージに貼り付けられた映像は2011年の東日本大震災のもの。投稿者は日本から遠く離れた中東在住の男性だった。

 「典型的な『インプ稼ぎ』の例。真剣な呼びかけに見せかけ、不安をあおってユーザーの目を引こうとしている」と平氏。「今は世界中で“悲劇の現金化”とも言える行為が行われている。こうした投稿が拡散すると本当に必要な情報が届かず、救助や避難の際に混乱が起きる」と危惧する。岸田文雄首相も先月30日、自身のXに「悪質な虚偽情報やデマは決して許されません」と投稿した。

 「インプ稼ぎ」横行のきっかけは、Xが昨年7月に発表した新たな広告収益分配システム。日本では、8月からXに課金しているユーザーが一定の条件を満たせば報酬が支払われるようになった。どれくらいもうかるのかは、Xが内容を公開していないので不明だ。このシステムの負の部分が顕著になったのが、10月からのイスラエル軍のガザ侵攻。過激投稿を拡散し、「インプ稼ぎ」する人が全世界で流行してしまった。

 EU(欧州連合)には、Xなど大規模プラットホームに違法・有害なコンテンツへの対処を義務付ける「デジタルサービス法(DSA)」があるが、日本にはDSAに相当する法律が存在しない。平氏は、法整備には時間がかかることから「プラットホーム側のきちんとした対応が必要」とした。

 また、真贋(しんがん)あやふやな情報を自ら作成したり、もともと存在したあやしげな投稿を拡散することで「迷惑なインプ稼ぎ」が成立していくとも指摘。「ユーザー側の意識も重要。情報の裏付けや発信元のアカウントの信頼性を確認し、安易に拡散しないことなどを心がけてほしい」と呼びかけた。

 ◆Xの広告収益分配システム 有料サービス「Xプレミアム」(日本の場合は月額980円)に加入、かつ「過去3か月以内の投稿閲覧数が合計500万回以上」「500人以上のフォロワー」の2条件を満たしたユーザーを対象に、投稿への返信に掲載された広告の収益の一部をユーザーに分配する。条件を満たすために、閲覧数を増やすことが必要。

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