第101回箱根駅伝に続く第100回箱根駅伝の「11区」 当日変更で出番なし偵察メンバーたちが力走

スポーツ報知
高根沢町元気あっぷハーフマラソンで力走する各校の選手

 第100回箱根駅伝(2、3日)は青学大が、学生3大駅伝5連勝中だった駒大に真っ向勝負で勝ち、10時間41分25秒の総合新記録で完全優勝を飾った。歴史的な大会が終わっても戦いは続いており、出番がなかった選手たちは箱根駅伝直後の各レースに出場し「11区」として力走した。青学大で2区登録されたが、当日変更で出番なしとなった平松享祐(1年)は14日に行われた栃木・高根沢町元気あっぷハーフマラソンで1時間3分55秒で学生トップの3位と健闘。第101回大会を目指す学生ランナーはすでに走り始めている。

 二重三重の人垣ができる箱根路とは対照的に、ほとんど観衆がいない栃木の田園道路。箱根駅伝で優勝した青学大と、11位でシード権(10位以内)を逃した東海大の箱根出場メンバー以外の選手は、高根沢町元気あっぷハーフマラソンに全力で臨んだ。

 青学大で唯一、ルーキーで16人の登録メンバー入りを果たした平松は、序盤から意欲的にレースを引っ張った。九州大、九州大大学院出身で2021年全日本大学駅伝8区出場経験を持つ実力派の市民ランナーの吉岡龍一(25)=ホンダ栃木=、日大出身で2013年箱根駅伝2区で区間賞を獲得したガンドゥ・ベンジャミン(32)=aBRC=に競り負けたが、学生トップの3位でゴール。「箱根駅伝を走れなかった悔しさをこのレースで晴らそう、と思って、積極的に走りました。風が強い中、粘れましたけど、やっぱり、優勝したかったです」と平松は冷静にレースを振り返った。

 平松が第100回箱根駅伝で与えられた役割は「2区偵察メンバー」だった。

 箱根駅伝の伝統的なルールとして「当日変更」がある。例年12月29日に1~10区と補欠6人が登録され、往復路とも当日午前6時50分に補欠選手を変更で投入できる。補欠に温存していた主力選手を勝負区間に投入する各校の駆け引きは大会の見どころの一つだ。エースが当日変更で出場する以上、出番がなくなる選手がいる。欠場が前提の選手は「偵察メンバー」と呼ばれる。

 当日変更ルールは戦後の復活大会から存在する。1964年に中大が6連覇を果たした時のエースで2021年に亡くなった碓井哲雄さんは「私が学生だった時から既に当たり前のようにありました」と証言していた。一部で「姑息(こそく)」「外れた選手や家族のことを考えていない」という批判があるが、箱根駅伝を志す学生ランナーは当日変更のルールを厳然と受け入れている。

 今回、平松は当日変更を前提に2区に登録され、当日に予定通り、エースの黒田朝日(2年)と交代となった。

 「2区に登録された時点で出場の可能性がほぼないことは分かっていましたが、1月2日の朝、黒田さんの体調に問題がなく、予定通りに交代が最終決定する瞬間まで、自分が2区を走るつもりで集中力を切らさずに準備していました」と平松は前向きに話す。

 箱根駅伝に向けて仕上げてきた心と体を高根沢ハーフマラソンにぶつけて、来年につながる走りを見せた。「今回の2区登録は『未来の2区候補』として受け止めました。来年の箱根駅伝には必ず出走して、4年生になった時には2区を任せられる選手になりたい」と意気込む。

 偵察メンバーならではの「掟(おきて)」がある。区間登録されると当然、周囲は出場を期待するが、当日変更はチームの最高機密のため、周囲に簡単に話すことはできない。平松は「地元(愛知)の友達から『2区、すごいね』というラインがあったけど『出場しない』とは言えないので『お楽しみに』という返信をしました。当日変更でガッカリさせてしまった分、来年は絶対に出場したい」と言い切った。

 平松には、もうひとつ奮起する理由がある。双子の兄・龍青の存在だ。龍青も専大で箱根駅伝を目指すランナー。「来年は兄と一緒に箱根駅伝を走りたい。兄もそのつもりです」と笑顔で話した。

 平松に続いて高根沢で学生2位となった青学大の中村海斗(1年)は初のハーフマラソンだった。「去年は故障が多くて、やっと10月から練習を積めるようになりました。今年は年間通じて練習を積んで、来年の箱根駅伝では8区を走ってチームの優勝に貢献したい」と話す。今回は16人の登録メンバーに入らなかった中村が台頭すれば青学大の選手層はさらに厚くなる。

 東海大では、箱根駅伝予選会(昨年10月14日)では出走メンバーに選ばれながらも本戦では登録メンバーから外れた中井陸人(2年)がチームトップの1時間4分47秒と健闘した。「青学大勢に勝ちたいと思ってスタートしましたが、10キロ過ぎで遅れてしまいました。もっと、力をつけなければいけない。(来季は)予選会ではチームの上位通過に貢献して、本戦では任された区間をしっかり走れる選手になりたい」と前向きに話した。

 箱根駅伝から、わずか「中3日」の7日に東京・北区で行われたハイテクハーフマラソンには箱根駅伝で17位だった順大、18位だった駿河台大の箱根駅伝メンバー以外の選手が出場した。専大OBで、実業団のJR東日本にも所属していた大橋秀星(33)=小平市=が1時間4分10秒で優勝。駿河台大で4区に登録されながら当日変更で出番がなくなったムサンガ・ゴッドフリイ(2年)が1時間4分15秒で学生トップの全体2位。順大8区登録で当日変更された荒牧琢登(1年)が1時間4分16秒で学生2位の全体3位に続いた。

 華やかな箱根路ではなく、寒風吹く荒川河川敷コースで力走した駿河台大のゴッドフリイは「コースは平たんで走りやすかったけど、風が強くてきつかった。ずっと先頭を引っ張っていたけど、最後に抜かれて悔しい」と喜ぶことなく話した。

 順大の荒牧も表情を引き締めたまま、1月3日朝の8区当日変更から、このレースにかける思いを語った。

 「当日変更の可能性があることは分かっていましたが、自分が8区を走るつもりで準備していました。地元(熊本)の友人たちは僕が箱根駅伝を走ることを楽しみにしてくれていたので、変更は残念ですけど、実力なので仕方ありません。箱根駅伝が終わった後の3日間も集中して、このレースに臨みました。風が強い中、しっかり、走れたと思います」

 順大は往路で10位だったが、復路は22位と苦戦し、総合17位。4年ぶりにシード権を逃し、第101回箱根駅伝は予選会(10月)からの挑戦となる。荒牧は「(来年度は)チームの主力となって予選会からチームに貢献したい。本戦では往路を走りたいと思っています」と強い意気込みを明かした。

 箱根駅伝直後のレースは「箱根駅伝11区」と呼ばれる。昨年のハイテクハーフマラソンでは、青学大の塩出翔太(当時1年、現2年)が1時間2分55秒の自己ベスト(当時)で学生トップを取った。第99回箱根駅伝で9区から当日変更で出番なしとなった塩出は「来年は絶対に箱根駅伝を走り、青学大の優勝に貢献します」と目をギラギラさせながら話した。1年後に有言実行。第100回箱根駅伝では8区で区間賞を獲得し、優勝メンバーに名を連ねた。

 青学大の原晋監督(56)は「目標としていた箱根駅伝を走れなかったと直後という難しい状況の中で、しっかりと頑張れる選手は必ず強くなるし、信頼できる」と語る。原監督は第100回箱根駅伝の「11区」で好走した平松について「意識が高く、練習を継続できる選手なので、来年度は学生3大駅伝でレギュラーに入ってくるでしょう」と高く評価。チーム2番手だった中村には「及第点です。故障さえしなければメンバー争いに加わるでしょう」と期待を込めて話した。

 3年連続でシード権を逃した東海大の両角速監督(57)は、高根沢でチームトップだった中井について「長い距離に強いので、来年の箱根駅伝では9区か10区を走れる選手になっってほしい」と期待する。

 勝ったチームも、敗れたチームも、次なる戦いを始めた。第100回箱根駅伝の「11区」は、第101回箱根駅伝の1区につながっている。(竹内 達朗)

 ◇ハイテクハーフマラソン上位成績(1月7日)

<1>大橋秀星(小平市)1時間4分10秒

<2>ゴッドフリイ(駿河台大2年)1時間4分15秒

<3>荒牧琢登(順大1年)1時間4分16秒

<4>鬼沢大樹(順大3年)1時間5分21秒

<5>堀越翔人(順大3年)1時間5分29秒

 ◇高根沢町元気あっぷハーフマラソン上位成績(1月14日)

<1>吉岡 龍一(ホンダ栃木)1時間3分32秒

<2>ガンドゥ・ベンジャミン(aBRC)1時間3分48秒

<3>平松 享祐(青学大1年)1時間3分55秒

<4>中村 海斗(青学大1年)1時間4分10秒

<5>中井 陸人(東海大2年)1時間4分47

<6>浜川 舜斗(青学大1年)1時間4分50秒

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