長与千種とライオネス飛鳥の「少女に戻って夢を見ましょう!」に2600人が熱狂…クラッシュ伝説復活の夜

スポーツ報知
1日のクラッシュ・ギャルズ40周年記念イベントのライブで熱唱する長与千種(左)とライオネス飛鳥

 プロレス少女たちの伝説が鮮やかに甦(よみがえ)った一夜だった。

 1日、神奈川・横浜武道館に満員2600人の観客を集めて行われたクラッシュ・ギャルズ40周年記念イベント「CRASH GALS 40th Anniversary スペシャルライブ―THE TOP―」。

 昭和の日本プロレスマットを席巻。今年、結成40周年を迎えた女子プロレスの名タッグチーム「クラッシュ・ギャルズ」のライオネス飛鳥(60)と長与千種(58)の2人が2005年4月の解散以来18年ぶりの復活を果たした。

 80年、全日本女子プロレスに同期入団した2人。デビュー3年後の83年にクラッシュを結成し、84年「炎の聖書(バイブル)」で歌手デビュー。85年にはTBS系ドラマ「毎度おさわがせします」にレギュラー出演し、人気爆発。社会現象といわれる大ブームを巻き起こした。

 89年5月、千種が引退してコンビは解散。5年9か月におよんだ伝説は幕を下ろしたが、00年、GAEA JAPANのリングで「クラッシュ2000」として復活。05年、2度目の引退、解散後、千種は女子プロ団体・Marvelousを設立。飛鳥は東京・銀座の会員制スナック「gangs」のオーナーとなっている。

 全盛期に2人を追いかけていたと思われる40~50代の女性中心に午後5時のライブ開始前から熱気であふれた会場。イメージカラーの青の衣装の飛鳥と赤の衣装の長与がステージ上に登場すると、観客は「千種!」「飛鳥!」の絶叫とともに赤と青のサイリウムを振り、体を揺らした。

 「炎の聖書」から3曲を立て続けに歌いあげた長与が観客に向かって「皆さんもいいお年になりましたね~」と語りかけると、飛鳥も「今日はあの頃に戻って、楽しい夢を見ましょう」と呼びかけた。

 激しいダンス入りの熱唱に長与が「息切れしてる人? 結構、苦しい人?」と問いかけると、観客は「はーい!」と素直に呼応。飛鳥は「素敵です!」と叫んだ。

 名曲「友情1987」を歌う前には長与が「私たちの友情もいっぱいいろんなことがありましたが、今、お互いの大切さ、優しさを感じて、この年になって一番大切なものと思えるようになりました」と本音をポロリ。この言葉に飛鳥もハイタッチで応えた。

 ジャガー横田(62)、アジャコング(53)、ウナギ・サヤカら新旧スター女子レスラーによるスペシャルマッチ3試合を挟んで行われたライブ第2部では、クラッシュの入場テーマ曲「ROLLING SABOT」が流れる中、氏家清春リングアナウンサーのコールのもと、2人がリングイン。リング上で「嵐の伝説」などを激しいダンスとともに熱唱した。

 最高潮に達した観客からの「クラッシュ」コールに汗まみれの長与が「感極まるよね」と涙を流せば、飛鳥も「ありがとうしかない!」と、こちらも汗をしたたらせながら言い切った。

 アンコールでは、サプライズゲストとして、来年、Netflixで放送される女子プロレスをテーマにしたドラマ「極悪女王」でダンプ松本を演じるお笑いタレントのゆりやんレトリィバァ(32)、飛鳥を演じる女優・剛力彩芽(31)、長与を演じる唐田えりか(26)が登場。クラッシュの2人と「炎の聖書」を歌い、踊り、大歓声を浴びた。

 アンコールの「嵐の伝説」まで全13曲を汗まみれで歌いあげた長与は「自分たちも40年。やばいよ。オギャーと生まれた子が40歳だよ。でも、皆さんのおかげで40年という年を迎えることができました」と感謝。飛鳥も「年齢を重ねて諦めていることも多いと思うけど、また、あの頃の少女に戻って、夢を見ましょう! 新しいゴールを目指しましょう!」と呼びかけた。

 最後に長与が「次はいつやってほしいですか?」と観客に呼びかけると「明日!」という声が殺到。これには2人そろって苦笑しながらも長与は「何年も置くと、私たちも諸事情が出てくるから、また来年かな」と近々の“再会”を口にすると、リング中央で抱き合い、互いに肩を抱いて花道を退場していった。

 まさに熱狂としかいいようのない3時間20分のステージ。両足に人工関節を埋め込んでいる飛鳥の現状から2人のリング上での復活ファイトこそ見ることはできなかったが、2人とほぼ同世代の私も80年代の熱狂がそのまま帰ってきたような時間に酔いしれた。

 88年に報知新聞社に入社した私がカラー1ページのプロレス特集面「ファイト93」の担当となったのが93年。遅れてきたプロレス担当記者はクラッシュ・ブームをリアルタイムで追いかけることができなかった。その一点に悔いが残っていた。

 だが、この夜、目の前で展開されたのは、40年前に目の前で味わうことができなかった貴重な時間の追体験。千種と飛鳥が心の底から楽しそうに歌い、ダンスし、何よりファンと一体となってはじける様子にこちらまで心が弾み、足でリズムを取り、気がつくと、なぜか涙がにじんでいた。

 01年に44歳の若さで亡くなったノンフィクション作家・井田真木子さんが遺した名著がある。91年に出版され、大宅壮一ノンフィクション賞に輝いた「プロレス少女伝説」。それは長与、神取忍ら80年代の女子プロレス界を駆け抜けたスターたち、そして彼女たちを追いかけた同世代のファンたちを描いた傑作ノンフィクションだった。

 この夜の横浜武道館の主人公・千種にも、飛鳥にも、そして、集った元プロレス少女たちにもそれぞれの人生があり、それぞれの今がある。「あの頃の少女に戻って、夢を見ましょう!」という飛鳥の呼びかけに一夜限り少女に戻った観客たちだって、また、それぞれの人生が始まっていく。

 甦った「プロレス少女伝説」の一夜は夢のように過ぎ去った。熱狂の余韻が色濃く残る横浜武道館を背にしながら、私は自分の頬をつたった涙の意味、そして、青春という2文字について、じっと考えていた。(記者コラム・中村 健吾)

 ◆クラッシュ・ギャルズ復活ライブ歌唱曲

 (1)「炎の聖書」

 (2)「東京爆発娘!」

 (3)「夢色戦士」

 (4)「Just Loving For You…」

 (5)「ALL FOR LOVE」

 (6)「友情1987」

 (7)「サイコー!ワンダーランド」

 (8)「嵐の伝説」

 (9)「イッキにRock’n Roll」

 (10)「日本美人 Hey JAPANESE!」

 (11)「BEAT GOES ON」

 (12)アンコール「炎の聖書」

 (13)アンコール2「嵐の伝説」

 ◆スペシャルマッチ全試合結果

 ▽「Next Leaders」タッグマッチ15分1本勝負

 〇桃野美桜(マーベラス)、ウナギ・サヤカ(フリー)(13分20秒 JKボム→エビ固め)青木いつ希(ショーンキャプチャー)、笹村あやめ(2AW)●

 ▽「Leaders」6人タッグマッチ15分1本勝負

 △彩羽匠(マーベラス)、橋本千紘(センダイガールズプロレスリング)、葉月(スターダム)(時間切れ引き分け)朱里(スターダム)、優宇(EVE)、雪妃真矢(フリー)△

 ▽「Legends」6人タッグマッチ15分1本勝負

 ▽ジャガー横田(ディアナ)、永島千佳世(フリー)、DASH・チサコ(センダイガールズプロレスリング)(10分00秒 回転エビ固め)アジャコング(フリー)、Sareee(フリー)、加藤園子(OZアカデミー)●

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