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アントニオ猪木さん「最後の夢」…「水プラズマ」は今どう進化しているのか?「福島の汚染土壌の処理への転用を提案」…きょう命日

スポーツ報知
水プラズマの公開実験を行った時のアントニオ猪木さん(右)と渡辺隆行教授(2020年10月31日)

 昨年10月1日に心不全のため79歳で亡くなった元参院議員で元プロレスラーのアントニオ猪木さんが1日、命日を迎えた。

 

 猪木さんは、世界的に問題になっている環境汚染への対策として2019年から「水プラズマ」を使った廃棄物処理の実現へ動いていた。通常、ゴミは、処理のため燃焼すると二酸化炭素が発生し環境汚染につながる。しかし、温度が1万度以上にも達する「水プラズマ」を使えば、瞬時にゴミは消滅し水素に変化し環境面においてさまざまな応用が期待されている。

 この「水プラスマ」は九州大学の渡辺隆行教授が開発し、神奈川の湘南台に本社を置く産業廃棄物の処理装置を開発する「Helix(ヘリックス)」社と組んだ革新的な技術で猪木さんは、テレビ朝日系「羽鳥慎一 モーニングショー」で「水プラズマ」の特集を見て、自ら渡辺教授へ電話をかけコンタクトしてきた。

 ゴミ焼却で二酸化炭素を排出しない「水プラズマ」。渡辺教授との出会いから猪木さんは晩年、一貫して「世界のゴミ問題を解決するには、この技術しかない」とゴミ問題解決へ情熱を注ぎ込んできた。

 この猪木さんの夢は、2020年10月31日に横浜市のみなとみらいエリア日本丸メモリアルパークで水プラズマの初の公開実験を行った。「INOKI Lab(猪木ラボ)」号と名付けた20トンもの実験トラックで長さ80センチの鉄がわずか5秒で半分ほどが消え実験は成功し「100点です」と胸を張っていた。

 猪木さんは昨年8月11日に都内の自宅で渡辺教授と面会し「水プラズマ」を「家庭でも使えるような小型のものを作ってみたらどうか」と提案した。10後の8月21日も渡辺教授に電話をかけ「一般家庭でも使えるヤツどうなった?」と気に掛けていた。しかし、1か月半後の10月1日に亡くなった。猪木さんは、人生の最後の夢として「水プラズマ」の家庭への普及を渡辺教授へ託した。

 

 あれから1年。今、「アントニオ猪木、最後の夢」はどう進行しているのか?

 命日を前に渡辺教授はスポーツ報知の取材に応じた。

 「猪木ラボはそのものは、福島の汚染土壌の処理などに転用する提案をしています」

 福島第一原発の事故で発生した汚染土の放射性物質を分離する処理に「水プラズマ」の技術を生かす構想を描いているという。現在は、提案段階だが福島の復興に猪木さんの「夢」を活用できるよう関係者は尽力している。

 さらに渡辺教授は九大で猪木さんから託された「水プラズマ」の小型化への試験を続けていることを明かした。

 「猪木さんの言うことは正しくて我々はどうしても大型のばっかり狙うんです。でも、それではすぐに普及はできない。だから普及するには、小型化は絶対に必要です。ただ、現時点では家庭用は難しくて町工場レベルで出てくる普通では分解できない廃水の処理ができる装置はできるだろうと考えています」

 

 2022年10月1日。猪木さんの肉体は亡くなった。しかし、世界のゴミ問題を解決すべく情熱を燃やした「水プラズマ」への「闘魂」は、渡辺教授らが受け継いでいた。

 

 一周忌。渡辺教授は猪木さんへの思いを明かした。

 「お元気だったとき、1週間に1回ぐらい朝6時ごろ電話が来るんです。あれはあれで大変でしたけど、あの叱咤激励はすごく励みになっていて、猪木さんはプラズマのことを勉強されていたので話をするのが、すごく楽しかったんです。だけど、亡くなられてあの電話がなくなってしまいましたね。だけど、猪木さんが『家庭用にしろ』っておっしゃった姿をすごく覚えている。あれこそ、肝に銘じられた本当の言葉です。私の中にはずっと毎日、頭の中に入っています」

 そして「寂しいんですよ…」とつぶやいた。

 「アントニオ猪木、最後の夢」。実現までには多くの時間、さらに多額の費用もかかるだろう。あらゆる困難が今後、待ち受けるはずだ。それでも渡辺教授は誓う。

 

 「猪木さんが空から見てますよ。『しっかりやれ!』って」

 言葉には確かな「猪木イズム」が生き続けていた。

 (福留 崇広)

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