29日の金曜ロードショー(後9時)は、「葬送のフリーレン 初回2時間スペシャル~旅立ちの章~」が放送される。10月6日から日本テレビ系で新設されるアニメ枠、”フラアニ”こと「FRIDAY ANIME NIGHT」(金曜・後11時)での放送を前に、物語の始まりをたっぷり楽しむことができる2時間。これまでには「ルパン三世」「名探偵コナン」のTVスペシャル版や総集編などを放送したことのある「金ロー」だが、TVアニメシリーズの初回放送は史上初の試みだ。
「葬送―」は、少年誌「週刊少年サンデー」に連載中の作・山田鐘人、画・アベツカサによる漫画が原作。2020年から連載がスタートし、現在までにコミックスは累計発行部数1000万部を突破。21年には「マンガ大賞2021」、「第25回手塚治虫文化賞」の新生賞を受賞するなど注目度の高い作品で、満を持してのテレビアニメ化となる。
物語の主人公は、勇者ヒンメルたちと共に、10年に及ぶ冒険の末に魔王を打ち倒した魔法使いのフリーレン。世間から感謝と祝福を受けた後、彼女は新たな魔法を会得するための一人旅に出た。
それから50年後、久しぶりにヒンメルを訪ねたフリーレン。1000年以上の命があり、半世紀前と容姿が全く変わらないエルフ(妖精)の彼女とは異なり、人間のヒンメルは老いて残り少ない命を永らえている状況だった。久しぶりの再会をしたのもつかの間、ヒンメルは死を迎える。その時、フリーレンはこれまで人間というものを知ろうとしていなかったことに気付かされ、「人を知る」ための旅に出ることを決めた…。
「勇者が登場する物語」と聞けば、ロールプレイングゲームの代表作「ドラゴンクエスト」のように「”ラスボス”をパーティー全員で力を合わせて倒す」というのが常道ではあるが、本作は「ボスを倒してしまった、その後の話」。回想シーンでヒンメルが登場することはあるものの、基本的にはフリーレンと「その他の人々」の姿を描くというのは、斬新な設定といえる。
それゆえ、今後の展開は分からないものの、本作を見た段階ではモンスターなどとのバトルシーンもほぼ登場せず。冒険物語を想像していた人にとっては「アレ?」となるかもしれない。
ただ、「敵を倒す」のではなく、「人を知る」ために出る旅の方が、様々なドラマが待ち構えているのは当然のこと。本作では、フリーレンが本格的に旅に出ることを決意するまでの姿までしか描かれないが、その時点でも様々な市井の人々との交流があり、フリーレンは様々な「学び」を得ていく。
個人的には、バトルものの作品はそのジャンルが映画、アニメ、漫画にかかわらず、敵が強くなっていくだけでパターン化してしまうことが多いので、好みではない。原作漫画を読んでおらず、今回のアニメが”初対面”なだけに、本作の今後の展開には、大いに期待している。(高柳 哲人)