【記者コラム】変化に屈してV逸の熱海富士 直後の取材中に“衝撃の一言”…相撲愛にあふれる21歳の今後に期待

敢闘賞を受賞した熱海富士
敢闘賞を受賞した熱海富士

 大相撲秋場所はまれに見る大混戦になった。優勝ラインは15日制が定着した1949年夏場所以降では最低となる11勝4敗。最後は決定戦の末、21歳の平幕・熱海富士(伊勢ケ浜)を、大関・貴景勝(常盤山)が退け、4度目の賜杯を死守した。決定戦の立ち合いは、大関が変化。「全く頭になかった」という熱海富士は、バッタリと倒れた。本割、決定戦と連敗し、無念の支度部屋では「勝ちたかったです。目の前にあったんですけどね。本割も、決定戦も…悔しいです」と、視線を落とした。

 普段から素直で純粋な21歳には引きつけられる。この日の支度部屋で彼の相撲愛に驚かされた。V逸のショックで報道陣の囲み取材には下を向き、悔しさをあらわにしていた。それでも、支度部屋のモニターに優勝インタビューの中継映像が映し出されると、「大関のインタビューを聞いていいですか?」と顔を上げた。音量がすぐに上げられない状況だったため、その場では聞くことはかなわなかった。

 史上最速となる初賜杯を阻止されたばかりの相手の、喜びの声を聞こうする姿は衝撃的だった。のちに真意を聞いた。「優勝する人がなんて言うのか、気になるじゃないですか」とサラリと答え、いつもの愛らしい笑顔。感情がすぐ顔に出るタイプで、勝てば花道では毎回のように笑顔がこぼれる。相撲大好きな21歳、この純粋さが、強さの源なのかもしれない。

 貴景勝は土俵下での殊勲の優勝インタビューで、熱海富士についてこう語っていた。「素晴らしい若い力士が上がってきた。同じ20歳とかで関取になって、僕よりも関取に上がるのが早いし、将来必ず強くなる。そのために、自分は何とか壁になるように強くなるだけだと思っています」。

 大きな壁として立ちはだかった大関からは期待の言葉が並べられた。支度部屋で聞けなかったその言葉を、熱海富士はどんな表情で聞いたのだろう。彼には、見たい、聞きたいと思わせる魅力がある。(大相撲担当・竹内 夏紀)

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