◆大相撲 ▽秋場所千秋楽(24日・両国国技館)
大関・貴景勝(27)=常盤山=が混戦を制して4場所ぶり4度目の優勝を果たした。2016年秋場所の豪栄道(現・武隈親方)以来、9人目となるカド番Vも成し遂げた。4敗での優勝は2017年秋場所の横綱・日馬富士以来6年ぶり。
貴景勝が苦しみ抜いて賜杯を手にした。14日目に豊昇龍(立浪)との大関対決に敗れて4敗に後退。「負けなので、それがすべて」。悔しさを押し殺して迎えた千秋楽。同じ4敗の大栄翔(追手風)を本割で下して決定戦に進出。熱海富士との決定戦では左に変化して一瞬で勝負を決めた。14日目の黒星で失いかけたチャンスを見事にものにして番付上位、大関の威厳を示した。
優勝インタビューで貴景勝は決定戦の一番について、「ああいう形で決まるとは思わなかった。集中してやるべきことをやりました」と語り、全休明けと苦しんだことについて「大事なところでケガをするのはまだ自分の本当の強さがそなわっていないから。ケガしない強い体作り、横綱になる資質だと思って」と綱取りを意識したコメントを残した。
名古屋場所を両膝半月板損傷で全休。今場所も初日黒星と優勝どころか大関陥落もチラついたが、強じんな精神力で持ち直した。師匠の常盤山親方(元小結・隆三杉)は「調子も戻ってきた。勝っているから充実しているようにみえる」。先場所の出場は場所直前まで迷ったが、「膝の治療に集中して正解だった」と場所中に明かした。
カド番での優勝は前師匠の貴乃花親方(当時)も1994年初場所で経験した。あやかるかのように今場所は締め込みを新調した。選んだ色はその先代師匠が現役時代に好んだ青色系。「やはり(心の底には)貴乃花への思いがあるんだな」。関係者がこう語るように子供の頃からあこがれた存在が最後の一押しにつながった。
今場所は横綱・照ノ富士(伊勢ケ浜)が全休。角界の屋台骨を背負う力士としての責任を最後の最後で果たした。優勝も今年初場所に続き2度目。夏場所で霧島(陸奥)、名古屋場所で豊昇龍と連続で大関が誕生したが、背負ってきた時間と経験が違うことを最古参大関が結果で証明した。