◆神奈川大学野球秋季リーグ戦第3週第1日▽桐蔭横浜大5―0神奈川大(23日・関東学院ギオンパーク)
桐蔭横浜大は最速153キロを誇る今秋ドラフト候補左腕の古謝(こじゃ)樹(4年)が13三振を奪い、2安打完封の快投。今秋リーグ戦初勝利を挙げた。
降り注ぐ雨も、ぬかるむマウンドも気にならない。古謝が集中力を高め、左腕を振った。9回2死、最後の打者をフルカウントに追い込むと、スライダーで空振り三振に斬った。13Kで2安打完封だ。疲れは吹っ飛んだ。堅守で助けてくれた仲間とのハイタッチに、思わず笑みがあふれた。
「開幕戦の時に不甲斐ない投球をしてしまったんで、きょうは自分の投球をすれば勝てると思って投げました」
この日のストレートの最速は148キロ。スライダーとのコンビネーションがさえ、カーブも効果的に操った。6日の今秋初戦・神奈川工大戦(横浜スタジアム)では先発したが、6回4安打2失点、5四球と制球を乱して降板。チームは勝ったが、悔しさが残った。
「2週間空いたので、テークバックをショートアームにするなど工夫しました。開幕戦ではスライダーが入らず、苦しい状況になりましたが、きょうはストライクが簡単に取れました」。四球は初回の1つのみ。「下半身のウェートトレの成果が出たと思います」と胸を張った。
7月には侍ジャパン大学日本代表の一員に選ばれ、敵地での日米大学野球選手権に出場。同世代のトップランナーたちとふれあった。中でも今秋ドラフト1位候補の東洋大・細野晴希、国学院大・武内夏暉(ともに4年)の両左腕からは刺激を受けた。「キャッチボールが本当にすごかった。教えてもらう感じでした。練習への姿勢やモチベーションの高め方を吸収できた。追いつけるように頑張りたい」。学びをチームに還元し、最後のシーズンに臨む。
好投手をプロや社会人に輩出することで知られる斉藤博久監督は「開幕戦から修正して、力感なくいいボールが放れていた。変化球もストライクが取れていたし、本当に良かった」とエースの復活に手応え。視察した広島の高山スカウトは「今年ずっと見てきて、考えて、打者との駆け引きができるようになってきた。スピードよりも手元でのキレで勝負できる。可能性のある投手」と称賛した。
「ラストシーズンになるので、悔いがないように。自分の成績は関係なく、チームのために貢献できる投球をしたい」と古謝。先発完投型のサウスポーはどのチームも喉から手が出るほど欲しい。大学最後の秋。フォア・ザ・チームの精神で力投し、新たな未来を切り開く。(加藤 弘士)