試練の夏を越えて、いよいよ大学駅伝シーズンが迫ってきた。学生3大駅伝の開幕戦、出雲駅伝は10月9日に号砲が鳴る。第2戦の全日本大学駅伝は11月5日に開催。そして、最終戦の箱根駅伝は来年1月2、3日に第100回記念大会を迎える。昨季、3冠を達成した駒大は今季も強い。史上初の2年連続3冠を目指す。前回の箱根駅伝2位の中大、同3位の青学大、同4位の国学院大なども頂点を狙う力を持つ。10月14日の箱根駅伝の予選会には関東以外の大学も挑戦する。今季も熱いタスキリレーが繰り広げられる。
「平成の常勝軍団」から「令和の常勝軍団」へ進化した駒大は今季、さらに新たな局面を迎えた。大八木弘明前監督(65)が総監督に就任し、ヘッドコーチだった藤田敦史監督(46)が昇格した。「監督にはすごい責任感がある。大八木のすごさを実感しています」。身内を呼び捨てにすることは社会常識だが、常にそれを徹底する藤田監督の言葉には大八木総監督への敬意がにじみ出ており、王者を率いる覚悟があった。
昨季、出雲と全日本を大会新記録で圧勝。箱根でも往復路を制する完全Vで3冠を果たした。出雲は6区間中4人、全日本は8区間中5人、箱根は10区間中7人のVメンバーが残り、今季も戦力が整っている。
1万メートル日本人学生歴代3位(27分41秒68)の鈴木芽吹主将(4年)、ハーフマラソン日本人学生歴代1位(1時間0分11秒)の篠原倖太朗(3年)、5000メートルU20日本記録(13分22秒91)の佐藤圭汰(2年)は学生トップクラス。前回箱根5区4位の山川拓馬(2年)、同6区区間賞の伊藤蒼唯(2年)と特殊区間のスペシャリストもいる。さらに、箱根Vメンバーから外れた花尾恭輔、唐沢拓海(ともに4年)も復調した。
昨季まで田沢廉(現トヨタ自動車)が絶対エースとして君臨。3冠に向けての鍵は「ポスト田沢」だ。藤田監督は「今季の核は芽吹。箱根の2区は芽吹でしょう」と現時点で「花の2区」起用を明かすほど信頼感は絶大だ。鈴木自身もエースの自覚を持つ。「2区はエースが走らなければいけない。自分が担ってチームを勝たせたい」と意気込む。
出雲駅伝が創設された89年以降、3大駅伝では大東大(89年全日本~91年箱根)の5連勝が最長。駒大が史上初の2年連続3冠を成し遂げれば、同時に史上最長の6連勝となる。箱根駅伝が第100回を迎えるメモリアルシーズンで、駒大は新たな最強伝説をつくろうとしている。(竹内 達朗)
◆国学院大・対抗一番手か
昨季は出雲と全日本が2位、箱根は4位。自他ともに認める強豪校となった国学院大は今季、さらに高みを目指す。「全員が本気で優勝を狙っています」と主将の伊地知賢造(4年)はきっぱり話す。
前回の箱根2区7位の平林清澄(3年)、同3区5位の山本歩夢(3年)、同5区7位の伊地知が3本柱。箱根では1、2年時ともに3区で好走した山本は1区出陣に備えている。「1区を区間賞で走って良い流れを作りたい。箱根で優勝するためには伊地知さん、平林、僕の3人は区間賞を取らなければいけない」と山本は力強い。佐藤快成(3年)、青木瑠郁(るい、2年)ら3本柱に続く選手層も厚みを増している。
昨季3冠の駒大が今季も本命。その駒大出身の前田康弘監督(45)が率いる国学院大が対抗一番手に挙がる。「駒大は強い。でも、堂々と勝負します」。言葉に迷いはない。
◆順大・スーパールーキー吉岡が飛躍の鍵
昨季は学生3大駅伝全てで5位以内だった順大は、8月の世界選手権(ブダペスト)3000メートル障害6位の三浦龍司(4年)を中心に、さらなるジャンプアップを目指す。今年の箱根駅伝は5位で3年連続シードを獲得し「最低限の目標」は達成。それでも2区を走った三浦は区間12位で「ふがいない走りだった」と最終学年での雪辱に燃える。
飛躍の鍵を握るのは、佐久長聖高出身で5000メートルの日本高校記録(13分22秒99)を持つスーパールーキー吉岡大翔(1年)。日本インカレでは同種目で日本勢トップの4位。「駅伝シーズンへ良い収穫になった」と夏合宿を100%消化した成果を発揮した。
前回箱根を走った5人が卒業し戦力ダウンも懸念されたが、5月の関東インカレ1万メートルは浅井皓貴(3年)が4位。三浦と共に共同主将を務める藤原優希(4年)も箱根経験者としてチームを引っ張り、上級生の底力も充実。上位争いの準備は、十分にできている。
◆中大 箱根駅伝で最多記録4冠(優勝14回、6連覇、出場96回、連続出場87回)の超名門・中大は96年以来、28年ぶり箱根路制覇へ意欲的だ。17年(予選会は16年)に連続出場が途絶える苦難を乗り越え、前回は96年以来の好成績の2位。前々回1区区間新で前回2区区間賞のエース吉居大和(4年)を中心に前回1区4位の溜池一太(2年)、同3区区間賞の中野翔太(4年)、同4区5位の吉居駿恭(2年)、同5区3位の阿部陽樹(3年)と往路メンバーが健在。阿部は「3冠を狙っています」と決意表明した。
◆青学大 前々回の箱根を大会新記録で圧勝した青学大だが、昨季は3冠王者の駒大に完敗。主将の志貴勇斗(4年)は「全員が危機感を持って夏合宿に励みました」と話す。大器と期待されながら2年時まで3大駅伝出場が一度もない鶴川正也(3年)、野村昭夢(3年)が順調に練習を消化。「最初の2年がダメだった分、残りの2年で6回区間賞を取ります」と鶴川は威勢良く話す。「ひとつ間違えればシード落ちもあるが、かみ合えば優勝もある」と原晋監督(56)。やはり、青学大からは目が離せない。