パリ五輪予選・ワールドカップバレー2023が開幕し、日本代表はパリ五輪出場権獲得を目指し熱戦を繰り広げています。
この舞台に立ってほしかった人がいます。石巻市出身の男子東京五輪代表セッターで、3月に死去した藤井直伸さんです。
中学からバレーボールを始めると一気に能力が開花し、県の中学選抜に選ばれ頭角を現します。その後古川工バレーボール部へ入部。初めて見たとき、天性のハンドリングの柔らかさに感嘆の声を漏らしたのを覚えています。才能溢れるセッターは茶目っ気があって常に笑顔の花を咲かせる存在でした。しかし、バレー人生は順風な歩みではありませんでした。
高校入学直後には膝の骨を折る大けが。数か月のベッド生活の間もボールを触り続け感覚を養い、退院後は持ち前の「高速トス」に磨きが掛かり、関東大学リーグの強豪、順大へ進学します。大学1年が終わろうとしたとき「東日本大震災」が発生。沿岸にあった実家は全壊。競技を続けていいか自問自答を繰り返す中で周囲の支えもあり続行を決意。卒業後は名門「東レアローズ」に入団。“超高速攻撃”の中軸として不動の地位を確立し2017年には東京五輪を目指す日本代表に初選出されます。
しかし、また不運が襲い掛かります。試合中に左手を骨折し手術。それでも不屈の精神でリハビリを続け見事復活、メダルには届きませんでしたが、念願の21年東京五輪出場を果たします。
そして、この年の年末、選手として熟達していく中で「ステージ4の胃がん」を告げられます。
「復帰したら実況してください!」と、携帯で話したのが最後です。2023年3月10日、31歳の若さでこの世を去りました。
まだ信じられません。選手としてコートに立ってほしいと今でも願っています。「もう『選手』じゃないよ、金沢さん!それより仲間を応援して!」。天国の藤井さんは屈託のない笑顔でそう言うでしょう。藤井さんの分までガンバレ!日本!!