◇高校野球秋季宮城県大会 ▽準々決勝(20日・石巻市民ほか) 仙台育英1-2東陵
宮城準々決勝では、東陵が今夏甲子園準Vの仙台育英を2―1で撃破し、7年ぶりの4強入りを果たした。先発したエース・熊谷太雅(2年)が8安打1失点の好投でチームに勝利をたぐり寄せた。
ふわりと上がった打球が左翼手のグラブに収まるのを見届けると、東陵のエース・熊谷は一気に表情を緩ませてガッツポーズ。仙台育英と対戦という大きな山場を乗り越え「本当にドキドキしたけれど、仲間を信用して投げ切れた。今までにないくらいうれしい」と仲間と抱き合い、喜びを分かち合った。
「いつもより調子が良かった」と184センチの長身から角度のある直球を内角へズバッと投げ込むと、時折スライダーを挟んで惑わせた。3回まで完全投球で流れを呼び込むと、4回1死一、二塁から沼田和丸(2年)の左中間への適時打で先制。熊谷の遊ゴロでさらに1点を追加し、2―0とリードした。
6回に1点を奪われたが、千葉亮輔監督からの「9割9分の人が育英さんが勝つと思っているんだから、楽に行こう」の言葉に「リラックスできました」。8回には2死二塁で右前打を浴びたが仲間の好返球にも助けられて同点のピンチをしのぐと、8安打を浴びながら1点差を守り切った。
春夏ともに準決勝で対戦し、コールド負けを喫していた相手。夏はスタンドで先輩たちが泣き崩れる姿を見つめていた熊谷は「俺らの借りを返せと言われていた。先輩たちの思いも持って、やっと勝てました」と笑顔だ。あと1勝で7年ぶりの東北切符が手に入る。熊谷は「仲間と一緒に一球一球大事に戦って勝ち上がっていきたい」と力を込める。三度目の正直で勢いに乗った東陵が、秋の主役に躍り出る。(秋元 萌佳)
響き渡る東陵の校歌を聴きながら、仙台育英の湯浅桜翼主将(2年)は天を仰いだ。準々決勝敗退で、来春のセンバツ出場は絶望的となり「自分たちの未熟さが出た」と目を潤ませながら、悔しさをにじませた。
先発右腕の山口廉王(2年)は3回1/3を3安打2失点。佐々木広太郎(2年)、武藤陽世(2年)が無失点と踏ん張ったが、打線は厳しい内角攻めに凡打を連発し、援護できなかった。須江航監督(40)は「できることはすべてやったけれど、すべて後手に回ってしまった」と渋い表情だった。
ナインは長い冬を迎える。指揮官は「ここ2年勝利をたくさん経験した。油断はなかったが、心の深い部分で何とかなるというのがあったのかもしれない」と大躍進の裏で生まれた見えないほころびに言及。「この負けから頑張るしかない」。須江監督の言葉通り、涙を力に変えて、一回り大きくなって春を迎える。