◆大相撲 ▽秋場所9日目(18日・両国国技館)
新大関・豊昇龍が新関脇・琴ノ若に小手投げで敗れ、早くも6敗目とカド番のピンチに立たされた。土俵際まで追い詰めたが、物言いの末に行司軍配差し違えで痛恨の黒星。これで3連敗と苦しい土俵が続いている。優勝争いは東前頭7枚目・高安と同15枚目・熱海富士の平幕2人が1敗でトップは変わらず。1差で追うのは西同16枚目・剣翔ただ一人となった。ともにカド番の大関・霧島と貴景勝は6勝目を挙げた。
豊昇龍がつかみかけた念願の白星はスルリと逃げた。結びで新関脇・琴ノ若戦。立ち合いは右に動いて狙い通りに上手を取ったが、すぐに切られた。焦りが出たのか、右を差すと、引きに乗じて相手の小手投げに構わずに前へ。両者もつれるように倒れ込んだ。際どい判定に立行司・式守伊之助も思わず目をつむり、豊昇龍に軍配。だが、約2分間の長い協議の末、粂川審判長(元小結・琴稲妻)が「豊昇龍の足の甲が先にかえっており…」とアナウンス。館内からは悲鳴と歓声が入り交じった。
新大関の重圧か、新入幕を果たした2020年秋場所以降、9日目終了時点での6敗は自己ワースト。支度部屋では口を真一文字に結んで怒りをにじませ、近づいた報道陣を左手で制して取材を拒否した。打ち出し後に取材に応じた粂川審判長は「難しい一番だった。土俵の上でも割れました。もう一丁という声もあったが、ビデオ室の方で甲がかえっていたと。攻め込んだ方が有利かもしれないが、残っているものは残っている」と、行司泣かせの一番を振り返った。
先場所まで10場所連続で勝ち越すなど抜群の安定感を誇っていたが、大ブレーキ。本来の姿にはほど遠い内容に、八角理事長(元横綱・北勝海)は「立ち合いは少し動いた。自信のなさですかね。立ち合いで上手を取るのではなく、自分の相撲を取り切ることじゃないですか」と期待した。
新大関が皆勤して負け越せば、2000年名古屋場所の雅山以来、昭和以降5人目の屈辱となる。終盤は2大関との対戦も控えているだけに、星はもう落とせない。昇進伝達式の口上に込めたのは「どんなことがあっても力強く立ち向かう」という不退転の覚悟。負けん気の強い24歳が、この難局を乗り越えてみせる。(竹内 夏紀)