◆JERAセ・リーグ 広島6―5阪神(15日・マツダスタジアム)
睡眠不足も二日酔いもなく、阪神・岡田彰布監督(65)の頭はフル稼働していた。18年ぶりの優勝決定の翌日。連勝が11で止まり、9月初黒星。77年ぶりの12連勝は逃したが、勝敗は二の次だ。1点を追う9回1死一、三塁で一塁走者の大山が盗塁死。通常なら痛恨の場面を指揮官は「これは大収穫やな」と不敵な笑みで振り返った。
「試してみたんや。一、三塁でどこ投げるかな」。盗塁を狙う選手ではない大山の“謎”の憤死は広島の戦術を見極めるためだった。三塁走者が、かえれば同点。捕手は重盗を警戒して二塁送球を自重するのか、アウトを奪いにくるのか。「そら試してみることもある。(CSで)当たるチームはな」とポストシーズンへの情報収集を開始した。2位争いが続き、真剣勝負の相手は格好の的だった。
結果的に無得点だったが、同点よりいい。「延長ならピッチャー使わなあかん。勝ちか負けるか、どっちかで勝負。(勝つなら盗塁成功で)二、三塁でな」。そこまで計算していた。残り14試合も「やっぱ、なんか目的を」と単なる消化試合にはしない。「きょうは中継ぎの見極め」と1軍当落線上の及川、加治屋、浜地を起用した。浜地は「あんまりよくないな。抹消すると思う」と2軍降格を示唆。歓喜の翌日の容赦ない判断に本気モードが表れた。
祝勝会の会場となった大阪府内のホテルに泊まり、午前10時に出発。ビールかけの後も多くの選手がテレビ出演をこなした。就寝は4時前後。それでも広島到着後は通常通りにミーティングを行い、主力が出場した。11安打5得点の攻撃陣を「今の感じなら消化試合にはならんよ」と信頼した指揮官。「(個人)記録とかある者は、どんどん狙ってええ」と伝えているが、浮わついた様子は見当たらない。(安藤 理)