8月下旬に行われた全国高校女子硬式野球ユース大会でクラーク仙台(宮城)が優勝し、東北の女子硬式野球チームとして全カテゴリーを通じて初の全国頂点に輝いた。打率5割超えと奮闘した内田梨絵瑠(りえる)主将と、6試合中4試合に登板して大黒柱となった柴田栞奈(かんな)投手の2年生2人が“白河の関越え”を振り返った。(取材・構成=秋元 萌佳)
2018年に東北初の高校女子硬式野球部として誕生してから5年。19年春の選抜大会と秋のユース大会の決勝に進出したが、いずれも準優勝に終わっていた。悲願の東北勢初優勝に大きく貢献した2人は金色のメダルを大切そうに見つめる。
内田(以下内)「自分たちの代で絶対に優勝したいと思って入学してきたのでうれしかった。先輩たちが悔しい思いをしてきたリベンジができたし、おめでとうとたくさん言ってもらって、本当によかったです」
柴田(以下柴)「最後、自分がいるマウンドにみんなが集まってきてくれて幸せだったんですが、初めての経験だからみんなぎこちなくて、それも面白かったですね」
3戦連続コールド勝ちで8強入りすると、準々決勝では最大のライバル・神戸弘陵(兵庫)に延長8回タイブレークの末にサヨナラ勝ち。勢いそのままに、決勝では夏の選手権準々決勝で敗れた福井工大福井を破り、頂点に立った。
柴「武器のコントロールの良さが、逆に相手の打ちやすさにつながっていると思って、夏の後は意図的にボール球を投げる練習をした。上下内外を使えるようになって釣り球を扱えるようになったのが、神戸弘陵打線にも通用した」
内「決勝の1打席目、先頭打者で初球をヒットにできたのが印象に残っています。絶対に負けないぞって最初からみんなにも、相手にも気持ちを見せられたかなと思う打席だった」
「笑顔満開」をテーマに、声を出し、笑顔を咲かせて雰囲気を盛り上げながら、目指すは春の選抜大会、夏の選手権との「3冠」。そして、東北初の女王として女子野球のさらなる発展にも貢献する。
内「(昨夏甲子園で)仙台育英さんが優勝した時、次は女子で自分たちが絶対に果たしたいと思って頑張ってきたんです。でも実際達成してみると、男子ほどヒーロー扱いじゃなくてちょっと嫉妬しました。あれ、私たちも日本一なんだけど…?って(笑い)。うれしいけど悔しかった。だからもっと私たちがアピールしたいですね」
柴「追い続けてきた日本一を達成しても、気持ちは挑戦者のままです。追う立場の熱量は自分たちが一番分かっているので、追い付かれないよう突き放し続ける意識で走り続けたい」
東北では秋田を除く5県、7校の女子硬式野球部が活動している。東北の女子野球界をリードしてきたクラーク仙台ナインは、初心を忘れず先頭を走り続ける。