アサヒグループがＣＭ契約中ジャニーズタレントを今後起用しないと発表　ラグビーＷ杯スポンサーで世界に向け迅速対応

　アサヒグループホールディングス（ＨＤ）は８日、ジャニーズ事務所のジャニー喜多川元社長による性加害問題を受け、今後、同事務所の契約タレントを起用したＣＭや販促活動を展開しないとの方針を示した。現時点での契約が満了した後は更新しない。またキリンＨＤも同様の方針を示した。アサヒグループＨＤは日本時間９日開幕のラグビーＷ杯フランス大会のワールドワイド・パートナー。差別や暴力などを起こした企業に厳しい視線が注がれる世界的な流れが加速する中、契約を更新しない動きにつながった可能性がある。

　嵐の二宮和也（４０）や、Ｈｅｙ！Ｓａｙ！ＪＵＭＰの山田涼介（３０）ら計２３人のジャニーズ所属タレントとＣＭ契約を結んでいるアサヒグループＨＤの動きは素早かった。

　同社はコメントの中で「明確な被害者救済と抜本的な組織運営の是正が認められない以上、取引の継続は当社の人権尊重方針に反する」と事務所側の対応を厳しく指摘。「抜本的な組織運営の是正」がない限り、ＣＭに起用しないという方針を打ち出した。Ｓｎｏｗ　Ｍａｎの目黒蓮（２６）とジャニーズＷＥＳＴの重岡大毅（３１）とＣＭ契約するキリンＨＤも「現在起用しているタレントの契約満了をもって、今後起用しない」とした。

　事務所が設置した特別調査チームは、９項目にわたって問題点を指摘。人権方針の策定と実施、人権に関する外部人材の起用など、コンプライアンスに関する機能を抜本的に改革することを求めた。７日の会見でトップ交代は表明されたが、今後の体制についても不透明なままだ。

　また事務所側は被害者に対し「法を超えて対応する」とし、異例の補償を行う方針を表明したが、現段階で被害者団体の交渉などは始まっておらず、補償内容も決まっていない。アサヒ、キリンの両社はこうした背景を踏まえて、ＣＭ契約などの見直しを決定したとみられる。

　ジャニーズ事務所が記者会見した７日、東京海上日動火災保険は同事務所との広告契約の解除を検討していることを明らかに。嵐らを起用したことがある日本航空も「適切な対応が取られるまでの間、広告への起用を見送る」と表明していた。

　関係者によると、アサヒグループＨＤのＣＭ出演料は契約期間に応じ、１人数千万円ほど。ジャニーズ事務所は被害者への補償に加え、ＣＭ契約を失うということになった。

　アサヒグループＨＤの対応が迅速だった背景に、識者はラグビーＷ杯フランス大会が影響した可能性を指摘した。同社は大会最高位となる「ワールドワイド・パートナー」をアジア企業として初めて勝ち取った。国内では「スーパードライ」の缶に大会ロゴが大きく入り、この日からＷ杯編の新テレビＣＭのオンエアが始まった。フランスでは１０月２８日まで９会場と１０のファンゾーンで「大会オフィシャルビール」として提供される。

　同社は２０１６年に欧州のビール会社を買収するなどグローバル展開を推進。ラグビーＷ杯の契約も、世界でビジネスをする上で武器になることを期待してのことだ。それだけに、ジャニーズ事務所によるマイナスイメージを払拭（ふっしょく）するため、早期に契約の見直しに動いたとみられる。

　雑誌「経済界」元編集長の古賀寛明氏は「性加害問題については海外の人権団体による抗議も想定されますし、投資家は取引先であってもスキャンダルを嫌います。アサヒＨＤは今回の問題について迅速な対応が必要と考え、ラグビーＷ杯が開幕した日に契約の見直しをいち早く表明したのでしょう」と解説した。