【箱根への道】王者駒大、史上初の大学駅伝2年連続3冠へ藤田敦史新監督「夏合宿からチーム一丸」で再出発

スポーツ報知
鈴木芽吹に声をかける駒大・藤田敦史監督(カメラ・小泉 洋樹)

 史上初の大学駅伝2年連続3冠に挑む王者・駒大が8月に長野・野尻湖、志賀高原で約2週間の伝統の夏合宿を敢行した。4月に就任した藤田敦史新監督(46)と鈴木芽吹主将(4年)が全日程帯同し、秋からの駅伝での偉業達成に向けたチーム作りを本格的にスタートさせた。

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 真夏の野尻湖から“令和の常勝軍団”へ再出発を切った。大八木弘明総監督(65)が率いた昨年までと同様に、駒大は先月16日から22日まで起伏のある野尻湖で1次合宿。28日まで標高1680メートルの志賀高原で2次合宿を張った。今月5日からは菅平で選抜合宿中だ。4月に就任した藤田監督は確かな手応えを感じている。「合宿はほぼ昨年と同じ流れで順調に来ています。大八木がやってきたのと同じく、野尻湖は足作りとスタミナ作りがテーマ。2度の30キロ走や本数の多いインターバル走、3部練習でしっかりと距離を踏んだ。志賀高原は心肺機能と脚筋力の強化を同時に行いました。駒沢の伝統の通り、夏合宿からチーム一丸となって、3大駅伝をもう一度勝ちに行こう、という雰囲気を作って行っています」

 大八木総監督が大学駅伝で歴代最多27冠を獲得してきた過去の練習データをもとに、藤田監督が練習メニューを細やかにアレンジしている。猛暑日が続く中、気温に応じて練習時間を柔軟に変更し、選手と積極的に対話するなど新たな“藤田カラー”も垣間見られた。「監督が天気予報を見て、練習時間を臨機応変に変更してくださるので、暑さ対策の面では助かります」と鈴木主将は感謝した。昨年度の全日本、箱根の優勝メンバーとなった山川拓馬(2年)は「藤田さんは話しやすいです。コミュニケーションを取りながら練習できているのは、自分にとってはプラス。チームの雰囲気は明るいです」と話す。

 10月の出雲駅伝、11月の全日本大学駅伝、24年1月の第100回箱根駅伝。駒大内のメンバー争いはし烈で、野尻湖での30キロ走などのポイント練習は緊張感にあふれ、それ以外の時間でも自発的にジョギングで距離を踏む選手たちの姿が目立った。昨年度の夏合宿から急成長を遂げ、前回の箱根駅伝6区で区間賞を獲得した伊藤蒼唯(2年)は「練習の設定タイムや強度は昨年よりも上がっていますが、自分たちが伸びるには必要なこと。箱根の山も見据えて、アップダウンのある野尻湖や志賀高原で、上りや下りの走りをもう一回見直しました」とうなずいた。

 楽しみな新戦力も台頭してきた。秋田工では5000メートル14分24秒39だった小松聖(1年)が、ロード練習をほぼ完璧にこなした。入学時の持ちタイムでは1年生10番手だった男だが「夏合宿は一番強かったですね。あんなにタフだとは思わなかった」と指揮官を驚かせた。駒大OBでもある秋田工・高橋正仁監督から「長い距離の適性は抜群にあるから、駒沢に行ったらこの子は絶対楽しみですよ」と言われていたという。「去年の伊藤のように夏合宿で覚醒して(全日本、箱根と)駅伝を走ったみたいに、1年生からそういう選手が出てくると、チームとしても面白い」と期待を込めた。

 さらに、3年生の庭瀬俊輝も今春から急成長中だ。4月に高橋尚子杯ぎふ清流ハーフマラソンで1時間3分15秒で学生トップ。6月の5000メートルで自己新記録の13分58秒02をマークした。「練習もだいぶできるようになって良くなってきた。このまま出て来てくれるといいな、と思っています。4年生が抜けたら一気に層が薄くなる。1~3年生にどれだけ力を蓄えさせられるか。そういったところは、ミーティングでも口を酸っぱくして言っていますね」と藤田監督は熱い視線を向けた。

 学生3大駅伝に向けて一丸で再始動した。夏合宿には普段、大八木総監督のメニューで練習する鈴木主将、篠原倖太朗(3年)、佐藤圭汰(2年)も参加。全員がそろう中、鈴木主将は先頭で練習を引っ張り、声をからした。「芽吹がいることでかなり引き締まった、いい合宿になった。2年連続3冠のためには、自分がキーマンになるというのを彼自身が一番理解している」と藤田監督も全幅の信頼を置いている。

 1月の箱根駅伝で3冠達成後、自ら主将に立候補した。「自分の成長につなげていきたいのもありますし、もう一回、3冠をチームに残していきたい」と鈴木。昨年までは左大腿骨骨折など故障が多く、同一年の3大駅伝フル出場は未経験だ。今季は体のケアを徹底し、7月に5000メートル13分24秒55の自己記録もマークしている。「3冠には僕が走るのが絶対条件ですし、区間賞も狙いたい。出雲駅伝は2年連続アンカーでゴールテープを切り、全日本大学駅伝は(1学年先輩の)田沢廉さんの7区の区間記録に挑みたい。箱根駅伝は2区を走りたい」と具体的な青写真も既に描きながら日々、練習に打ち込んでいる。

 鈴木主将は「原点と縁。史上最高への挑戦」を今季のチームスローガンに掲げた。「『縁』は僕のアイデアです。もう一回、3冠するためには、もっとチームの結束力を高めないといけないとすごく思ったので。『史上最高』には昨年度のチームを超える意味もありますし、2年連続3冠も今までないことなので」と熱い思いを込めた。

 前回の箱根駅伝総合優勝メンバーが7人残る。さらに、今年に入っても王者の進化は止まらない。篠原が2月の香川丸亀国際ハーフで、1時間0秒11秒の日本学生最高記録を樹立。5月の関東インカレ2部ではハーフマラソン赤星雄斗(4年)が優勝、山川が2位。昨季故障で駅伝を欠場していた唐沢拓海が1万メートル27分57秒52、白鳥哲汰(ともに4年)も5000メートル13分41秒39と今春自己新記録をたたき出し、復活を遂げた。8月の世界ユニバーシティー夏季大会(中国)5000メートル決勝では、安原太陽(4年)が2位に入った。

 4年生を中心に分厚い選手層で今季3大駅伝も優勝候補の筆頭として当然、他校のマークは厳しい。藤田監督は「核となるエース(吉居兄弟)がいる中大がかなり力をつけています。青学大、国学院大、順大も怖い存在ですね。試合になったら、絶対に負けない気持ちでやることが大事」と警戒した。一方で「私たちはまず、じっくり自分たちのチームを見ながらやることが大切」と冷静に話した。鈴木主将は「どのチームも僕たちを倒しにくると思うので、それに負けないようにということは意識して。重圧と言うよりはやってやるぞ、という感じです」と胸を張った。個性豊かな藤色の王者は、チーム内の競争を続けながら一丸となって新たな最強伝説を築く。(榎本 友一)

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