「あれは自分です」
台北の夜風に吹かれながら、丸田湊斗(慶応3年)は爽やかな表情で認めた。
話は夏の甲子園決勝から5日後の8月28日に遡る。「Official髭男dism」のベース、サックス奏者・楢崎誠がパーソナリティーを務めるエフエム富士の人気ラジオ番組「ロヂウラベース」で、ある1通のメールが紹介された。
「初めまして。慶応義塾高校野球部の丸田湊斗です。先週のラジオを拝聴しました。ならちゃんに僕の名前を読んでもらった時は、本当にびっくりして、うれしくて、甲子園の疲れが吹っ飛びました」
「『ロヂベー』は高校に入ってから、あんまり聴けてなかったのですが、中学時代に毎週聴いていたので、感じたことのない高揚感からすぐ家族や友人に自慢をしました。ちなみに最初の『ロヂベー』ロンTを持っているぐらい好きです」
「ファンクラブのトークルームでもさとっちゃん(ボーカル、キーボードの藤原聡)に認知してもらい、ニヤニヤが止まりませんでした。『ヒゲダンの皆さんに届け!』と思って、ラバーバンドやタオルを甲子園に持っていっていたので、それが叶ってこれ以上ない幸せです。話題にしていただいたファンの方にも、感謝しかありません。本当にありがとうございました。またライブでお会いする日を楽しみにしています」
これには楢崎とヒゲダンのドラマー・松浦匡希も思わず興奮。「うれしいですね!」「本物か!?」「信じよう!」「優勝おめでとうございます!」「歴史的快挙ですよ!」「ロヂボーイ(同番組のリスナー)で慶応はプラマイゼロかもしれん!」とスタジオ内は異様な熱気に包まれ、リスナーの間でもSNSに歓喜の投稿が相次いだ。
丸田にとってヒゲダンは特別な存在だ。センバツ出場時のアンケートには好きなタレントについて「Official髭男dism」と書き、趣味にも「Official髭男dismの曲を聴く、liveに行くなど」と記すなど、並々ならぬ「ヒゲダン愛」を爆発させてきた。
今回、番組にメールを送った理由について、丸田はこう語ってくれた。
「甲子園のベンチでヒゲダンのタオルを使っていたら、ヒゲダンのファンの方が気づいて、話題にして下さったんです。それから応援もいただいて…。感謝の気持ちを伝えたくて、メールさせていただきました」
十代の後半に好きだったことは、おそらく一生好きなままでいて、人生を豊かにしてくれる。
丸田の真っすぐな想いはメンバーや、同じくヒゲダンを愛するファンの方々へ、届いたに違いない。ちょっと、ビックリしただろうけど。(編集委員・加藤弘士)