慶応の優勝で幕を閉じた夏の高校野球。今夏も将来の野球界を背負う原石たちが各地で躍動した。そこで10月26日のプロ野球ドラフト会議に向けて、プロ注目の高校生をピックアップ。今回は日本ウェルネス・辻口輝(あきら)投手を紹介する。
足を大きく上げ、力強く腕を振り下ろす姿が、ロッテ・佐々木朗希を連想させる。通信制の高校に籍を置き、全国的には無名ながら、1球で球場中の視線を釘付けにする存在が、辻口だ。ブラジル人の父と日本人の母を親に持つ。身長は夏の大会の時点で朗希より1センチ高い193センチで、本人曰く「まだ伸びている」。まだ体重は83キロと細身だが「朗希さんのような強い真っすぐを投げたい」と、鍛錬を重ねてきた。
直球の最速は140キロ台だが、長身からリリースするボールは球速以上の威力を持つ。加えてカットボール、スライダー、カーブ、フォーク、ツーシームと多彩な変化球を操る器用さもあり、特に落差の大きいカーブは楽天・岸孝之を彷彿(ほうふつ)とさせる。視察に訪れた某球団スカウトも「カーブの角度が良い。これから期待できる投手」と将来性に太鼓判を押す。
高校入学直後、スライディングに失敗して左手首を骨折。1年時は外野に専念し、2年生の春から本格的に投手としてのメニューに取り組みだした。投手出身の磯口洋成監督(74)のもとで、基礎を固めた。「ため」を作るべくゆっくりとお尻から倒れるフォームを意識。体力面でもタイヤを持ちながら走り込むなど下半身の強化に取り組むと、入学時に比べて15キロの増量に成功し、球速は140キロを突破した。今夏の東東京大会では、4回戦の小山台戦で9回1/3を投げて自責点0に抑えるなど、チームの6年ぶりの16強入りに貢献。ポテンシャルを示し、一気にドラフト候補まで駆け上がった。
上のレベルへの憧れは強く、大会期間中から進路について「プロ一本です」と力強く宣言してきた。プロ志望届も一番乗りで提出した。朗希にも引けをとらないポテンシャル。同じ舞台で投げ合う姿を早く見てみたい。(松下 大樹)