台北で行われているU18W杯。ここまで、高校日本代表は開幕から3戦3勝。強い風が吹き抜け、大粒の雨が降り注ぐ悪天候の中でも、ナインが思いを一つに勝負へ臨み、一戦一戦経るごとにチームとして結束を固めている姿が印象的だ。
中でもこの夏、惜しくも地方大会で敗退し、甲子園の黒土を踏めなかった選手たちの躍動がまぶしく映る。
メンバー20人中、今夏の甲子園に出ていないのは大阪桐蔭・前田悠伍投手、霞ケ浦・木村優人投手、山形中央・武田陸玖投手、横浜・緒方漣内野手、明徳義塾・寺地隆成内野手の5名だ。
前田は前半のヤマとなる3日の米国戦に先発し、6回途中を4安打無失点、無四死球の快投。球速で投げ分けた2種類のチェンジアップを武器に8三振を奪い、メジャーの卵を手玉に取った。
木村は2日のパナマ戦で4回から2番手登板。3イニングを完全、5三振を奪う堂々の世界デビューだった。故郷・茨城からは唯一の選出となっただけに「茨城代表として選ばれている責任を力に変えて、頑張っていきたい」と粋な言葉で決意表明した。
武田は初戦のスペイン戦で2番手救援。2回を無失点に抑えた。その翌日のパナマ戦には「3番・DH」でスタメン出場。3打数無安打に終わったが、5回にはしっかり犠打を決めるなど投打に貢献している。
緒方は本職の遊撃ではなく二塁を守りながら、初戦のスペイン戦では3打数3安打3打点1四球。2日のパナマ戦でも3打数3安打と「6の6」で沸かせた。米国戦では3番を任され、2打数1安打2四死球。ここまでの11打席で10度出塁し、凡退は1度のみ。出塁率は驚異の「.909」。チームに欠かせぬ存在だ。
寺地も3試合連続で1番打者を務め、全試合でヒット。米国戦では4打数3安打1打点と暴れまくった。本職は捕手だが、一塁の守備も巧い。初球から振りにいく積極果敢さが持ち味。さらには、異次元のでっかい声でナインを鼓舞している。
馬淵史郎監督(67)は彼らの活躍について、3日の米国戦後、言った。
「甲子園に出られなかったので、この大会で!と期するものがあると思います。よくやってくれていますね」
前田も語気を強めた。
「逆に、気持ちが上がっているというか。夏にいい結果が出なくて、何とかジャパンでいい結果を出すしかないと、ずっと練習していました。その結果が出てきたと思います」
仙台育英・須江航監督の言葉を借りるなら「人生は敗者復活戦」。夏の悔しさからはい上がって、酷暑の中、再び心身を整えてきた若者たちのたくましさは称賛に値する。
異国の空の下、日に日にワンチームとなりつつある20人の青春を、今後も追っていきたい。(編集委員・加藤弘士)