◆飛び込み ◇日本選手権 第2日(2日、日環アリーナ栃木)
女子高飛び込み決勝で20歳の金戸凜(セントラルスポーツ)が330・65点で初優勝し、24年パリ五輪予選となる来年2月の世界選手権(ドーハ)の代表選考基準を満たした。
金戸が涙の復活Vを果たした。4本目で得点が伸びず、僅差の2位で迎えた最終5本目。しぶきの少ない入水を決め、観客の拍手が響いた。プールから上がって順位を確認すると「けがしてからの11か月間がパッて出てきた」と両手で顔を覆って号泣。6連覇中で五輪代表内定の荒井祭里(JSS宝塚)を8・35点差でかわし、「11か月前の自分からは考えられない。1人ではここまで来られなかった。感謝したい人たちに演技で返せた」と初優勝の喜びをかみしめた。
昨年9月の練習中に左膝を痛め、救急搬送された。診断は後十字じん帯の断裂に内側と半月板の損傷。すぐに手術し、地道なリハビリを続けてきた。5本通して練習が出来たのは約1か月前。最近まで日常生活でも痛みが消えず、通学時に「駅から歩いて学校に着いたら『痛い』って思う感じだった」。現在も「飛べるギリギリのライン」。疲労が痛みにつながるため、初日の女子シンクロ板飛び込みは棄権していた。
一時は競技に復帰できるのか不安もあった。だが、プールで練習を行えるようになると、「良く戻ってきたね」「膝どう?」と温かい言葉をかけられた。「すごく気にかけてくれる方が多くて、やっぱり自分の居場所はここなんだなって思える日々だった」と、復帰を支える原動力になった。
来年2月の世界選手権の代表切符を逃せば、パリ五輪は絶望的となっていた。祖父母、両親もオリンピアン。21年東京五輪では届かなかった“親子3代”の夢へ、「ラストチャンス」を勝ち取り、道はつながった。「ドーハに選んでいただけたら、そこもまたラストチャンスになる。トレーニングやリハビリを頑張って、もっともっと自分の演技を高めていけたら」と決意を込めた。