「バット引き」を務めるのは開幕投手の重責を担ったばかりの、夏の甲子園大会NO1右腕だった。
1日には初戦となるスペイン戦に臨み、10-0と6回コールドで快勝発進したU18日本高校代表。現地のベンチ脇にあるカメラマン席で取材する私から見ても、風通しがいい、仲の良いチームであることが伝わってくる。
ナインは口をそろえる。
「ムードメーカーは東恩納(蒼=沖縄尚学3年)です」
この夏、沖縄大会から甲子園まで47回1/3の連続無失点をマークした「ミスターゼロ」。この夜も重圧とは無縁に先発して2回を無安打無失点、4三振を奪う力投でチームに勢いをつけた。打線の爆発を呼び込み、リードが8点に広がったところで今後の連戦も見据え、24球で降板。見事に大役を果たした。
そんな右腕は試合終盤、自ら「バット引き」を担い、打席へとダッシュで往復していた。
「これから連戦が続くと思うんですけど、そこをしっかり一戦一戦勝ち切って、次のラウンドにしっかり行けるようにやっていきたい」
チームのためにできることを自ら見つけて、さりげなく遂行する。
東恩納がナインから愛される理由が、少しだけ分かった。(編集委員・加藤弘士)