惜しくも名人の座を逃したが、坂本選手の表情には充実感が漂っていた。「小澤名人と試合ができただけでもうれしい。力は出しきったつもり」と、さわやかに汗をぬぐった。
上桂川で釣りをするのは、下見に入った前日(23日)が初めて。ほぼぶっつけ本番の大一番では、得意のスタイルにこだわった。「一度だけ少しトロ場を狙ったけど、ほとんど瀬を釣った」。各ポイントの一番追い気の強い野アユにターゲットを絞り、早いテンポで移動。機動力を生かした攻め方で、第1試合は勝利した。第2試合も8―9で迎えた後半開始直後にヒット。しかし、痛恨の高切れで“ドンブリ”に。何とか引き分け(12―12)まで挽回したが、悔やまれるアクシデントだった。
敗れはしたが、小澤名人を追い詰めて、その実力を証明した。「また優勝して、もう一度チャレンジしたい」。49歳の銀行マンは、新たな夢を追い続ける。