小澤名人が「報知アユ釣り名人戦」V4を達成した―。「第54期報知アユ釣り名人戦」(主催・報知新聞社、協力・上桂川漁業協同組合)は24日、京都・上桂川で行われた。今夏の「第54回報知アユ釣り選手権・オーナーカップ」(5~6日、和歌山・有田川)を制覇した坂本浩規選手(49)=和歌山市=が、小澤剛・第53期報知アユ釣り名人(53)=豊田市、巴川遊鮎遊=に挑戦。勝負は1勝1敗1引き分けだったが、名人戦規定により小澤名人が3度目の防衛を果たした。上桂川での名人戦は初めて。
空に広がった雲の切れ間から注がれる陽光が、スポットライトのように勝者を照らした。3試合、約6時間にも及ぶ激戦を制した小澤名人。「第1、2試合とも完全に負けていた。3試合目は神様がくれたチャンスだと思い、開き直れた」と銀色に光る名人杯を抱き、にこやかに目尻を下げた。
舞台はなじみがない上桂川。ぶっつけ本番に近いながらも、あらゆるタイプの河川を経験している猛者だけに心配はなかった。2日前から下見に入り、「これならいつもの釣りでなんとかなる」と手応えを感じていた。ただ、増水後の引き水とあって、刻々と変化する河川の状況は、アユにどんな影響を与えるのか把握しきれないわずかな不安がよぎっていた。
当日は更に水が落ちたものの、それでも平水をキープ。「これなら大丈夫だ」とオトリを引いて、思い描いたイメージ通りに瀬を攻めたが反応が鈍く、一向にペースが上がらない。不安は的中した。「下見で出した答えが効かない」まま、釣れると確信したポイントでも空振りに終わり、不完全にも2試合を消化した。
そして決着の第3試合。ついに「小澤劇場」の幕が開いた。瀬でテンションを抑え、待つ釣り方に一変させた小澤名人。「魚を押さえて待つと、急に反応が出だした」と前半戦で14尾まで伸ばし相手を振り切った。「止めたり戻したりと、泳がせ釣りとの境目のように、自分の中では一番弱い引き釣りに徹した」と新たな正解を導き出し、見事な対応力で勝利を収めた。
対戦者の坂本選手を、評判からも、自ら目の当たりにした今夏の「報知アユ釣り選手権・オーナカップ決勝大会」での戦いぶりからも、実力は一級品と察していた。表彰式で「対戦して改めて強さを感じた。勝てたのは運が味方してくれたのかな。3試合も戦えて楽しかった」とたたえた。
心技体。40歳前後が三要素のピークだったと言う。以降、それでも頂点に君臨するのは強い精神力以外の何物でもない。「でも、試合になると油断や焦りが出てくる。全ての感情をなくし、アユを釣る機械のようになりたい。その境地にたどり着けばもっと勝てるかな。目標はアユ釣りマシンになりきること。今回はそれに近い状態でできた」と振り返った。これからも続く孤独なレースに向けて、パワーアップした〃シン・オザワ〃が始動する。
主催 報知新聞社
協力 上桂川漁業協同組合