◆第66回ダイヤモンドレース(G1)4日目(28日・飯塚オート)
オートレース界のNO1プロスペクト(超有望株)が、最近毎日のように口にしているフレーズがある。
「あ~、早くジ~の付くタイトルがほしいよお~」
長田稚也の言う「ジ~」とは、もちろんGを意味する。そうグレードタイトルのことである。そして、いよいよその願いが成就する時がやって来た。
準決勝戦9R。5枠から会心のスタートダッシュを発動し、これ以上ない展開を自らの技量で完全メイクすると、序盤で一気に勝負を付けて1着ゴールを決めた。第66回を数える地元飯塚のG1でファイナリストとなった。さあ、V取りへの舞台はここに整い切った。
「スタートはメッチャ、切れましたよ! 展開も完璧です。あれ以上はないぐらいですね。エンジンもマジでいいですよ! 今回は整備の姿勢も攻めたので!」
8月27日は、準々決勝戦デーだった。長田は11Rに登場した。レース前の降雨で走路は濡れに濡れて、マシンを通過させるコース取りは難解を極めた。
19年デビューから、まだ5年。キャリアの浅い長田にとっては、厳しい局面だった。少しでもミスをして、マシンの挙動を乱せば大敗して、準決勝戦への道はここに途切れてしまう。内か、外か。長田は慎重に、かつ冷静にライバルたちの動向に細心の注意を払いながら、中間着をキープし続けた。5着ゴール。ギリギリではあったが、何とか勝ち上がり権利を抱きしめて離さなかった。
「いやあ、ここは絶対に惨敗だけはできない場面でしたからね。前に進みたいけれど、後ろに下がることはもっとしてはいけない。自分、マジで頭を使いましたよ。頭を回転させ過ぎて、体よりも頭脳が疲れています(笑い)。でも、何とか残れて本当に良かったです! 聞いてくださいよ! 8月27日は母の誕生日なんですよ! 母のバースデーで、何とか生き残れて本当に良かった。母も喜んでくれていると思います!」
キャリアはないが、まるでベテランのごとく、戦況を読み切り、無駄に着順を落としたりしない。この辺りにも将来のチャンピオン候補と呼ばれるだけの資質はある。
そして、セミファイナルの前に断言した。
「今回は整備を攻めます。これまで状態がいいからといって、置きに行ってグレード戦で勝ち上がれなかったんです。だから、今回はどんどん積極的にパーツを換えていきますよ! もし、エンジンを壊しても、ためらって負けちゃうよりは全然いいですからね!」
その宣言通りに、節間にクランクを改め、大事な局面でカムのパーツ交換を敢行した。
「はい! それが正解でした! マジでよくなってくれました! これなら…」
長田はいたずらっぽくもあり、不敵でもある絶妙なスマイルを顔中ににじませて、「今回は取りたい! 絶対に取りますよ~!」
8月29日の晩。
めでたくジ~の付くタイトルを手にした長田の口癖はちょっとだけ変わっているだろう。
「エスジ~の付くタイトルが欲しいよお~」に。(淡路 哲雄)