孤高の若き整備マスター、仕上げました!稲川聖也「ずっと手を動かし続けて本当に良かった」…飯塚G1ダイヤモンドレース3日目準々決勝

スポーツ報知
準決勝戦に進出した稲川聖也

◆第66回ダイヤモンドレース(G1)3日目(27日・飯塚オート)

 若き孤高のメカニックが誰の助けも借りずに、ワンメイク状態で強豪たちと互角に渡り合えるマシンを作り上げた。そして、結果を出した。準々決勝戦9R。稲川聖也がうなるマシンを味方に豪快に後続勢を突き放した。アウェーの飯塚に単身乗り込み、価値あるG1準決勝戦進出をここに実現させた。

 「いやあ、ずっと手を動かし続けて本当に良かったです(しみじみと、かみ締めるように)。エンジンは間違いなく普通以上にはありますよ! 上出来だと思います!」

 多くのレーサーが言う。「整備に正解も答えもない」と。

 ほんのわずかなネジの強弱で、たった1度の気温変化で、センシティブすぎるオートレースのエンジンはすぐにご機嫌になったり、超不機嫌になったりする。山の天気よりもその変化は激しい。だからこそ、キャリアある先輩から、後輩はその教えや法則を教え伝えてもらう。なかなか独学で体得することは難しい。

 しかし、その難儀に稲川はキャリアが浅いうちから立ち向かった。「自分で学んで、自分で感じて、自分で覚える」。そのスタンスを徹底的に貫いた。

 この世界は、縦横のつながりが今も色濃く残る。単独行動は大手を振って歓迎されることはない。それでも、稲川は己の感性と感覚を信じて、孤独に失敗と成功を繰り返してきた。見た目はホスト風で、繁華街を闊歩(かっぽ)する方が似合うかもしれない。しかし、この男の信念はガチだ。周囲に何を言われようが、ひたすら自分の考えを押し通す。

 「そうしようと、自分で決めたわけですからね。でも、本当に整備って楽しいですよ。特に動いてくれた時は楽しすぎます。今の課題は本当にだめになった時に立て直すことです。今の自分には、まだそこまでの技術はないんです。普通以上に仕上がっているエンジンを少し上昇させるぐらいですね、今の自分にできることは。自分は青山周平さんがすごいと思います。メッチャエンジンを掛けて、あっという間に仕上げてしまう。その姿を見ていると自分はまだまだだなあ~って思います」

 そうはいっても、彼はまだ2017年にデビューしたたばかり。まだまだ若手カテゴリーの選手であり、この先の伸びしろが大いに期待できる現在地である。

 「まだ最重ハンデに定着しているわけじゃないし、活躍できるのは逃げている時だけですからね。でも、もっとエンジンのことを勉強して、知って、本当に悪くなる前に気づけるようになりたい。それができるようになれば、成績も安定してくると思いますし、ランクだって上がってくるはずですからね!」

 この信念と覚悟があれば、稲川はどこの世界でも成功できる人間なのではないかと想像できる。「は~い! それね、結構言われちゃうんですよねえ~、ボク!」。そう、おちゃらけながら全力でドヤ顔を決めた稲川はやっぱりホスト風だった。そのギャップも、またよし。(淡路 哲雄)

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