人としての武器は人間力、レーサーとしての弱点もまた人間力・岩田裕臣「自分は人に恵まれすぎてしまうんです」…飯塚G1ダイヤモンドレース2日目5R1着

スポーツ報知
2日目5R1着となった岩田裕臣

◆第66回ダイヤモンドレース(G1)2日目(26日・飯塚オート)

 もしも、取材対象ではなく、ひとりの人間としてオートレーサーたちを眺めたら、友達にするなら岩田裕臣がいい。彼は、思いやりがある。心根がやさしくて、先輩、後輩、そして同じ31期生。岩田は誰からも愛されている。

 でも、人から愛されれば愛されるほど、勝利からは見放されてしまう。それがオートレースである。命を張って、人をどかして、勝利を強奪する。ヤワなメンタルの持ち主にこの稼業は向いてない。

 しかし、今さら性格は変えられない。2011年にデビューして以来、すでに10年以上ものキャリアを積み上げてきた。やさしいハートを備え続けて。

 「自分は人に恵まれすぎてしまうんです」と岩田は言う。彼の人間性は、勝利よりも人を呼び込んでしまう。

 「師匠の影山伸には本当にどこまでもよくしていただいています。デビューして2級車に乗っていた頃は、すごくおっかなかったです。おれ、この世界でやって行けるのか? って思うぐらい厳しい方でした」

 厳しい分、その倍以上に影山はやさしかった。

 「ヒロはやさしすぎて、勝負に貪欲になり切れない。その辺りは自分に似ちゃっているのかなあ」と師匠はつぶやいた。

 そして、こうも続けた。「周平(青山)みたいに、ヒロもガツガツ行けばいいのにね。乗る方はそんなに負けていないんだし、もっとやれていいんんだよ、本当に」

 影山と岩田、そして青山は同じ整備グループに属している。そして、岩田と青山は幼なじみで、幼少の頃から今もなお家族ぐるみの交流が続く仲である。

 「自分はロードレースから転向して、2級車で結果を出せて、1級に乗ってすぐにSGでも活躍できました。その時に、簡単だなとは思いませんでしたが、このまま働いていけば周平みたいにいつかは大きいレースも勝てるんじゃないかなと思いました。でも…」

 しばらくすると、岩田は深刻なスランプに喘ぐことになった。「デビューから数年は順調だったのに、いきなり壁に当たって、それまで簡単とは言わないまでもやれるなと思っていたことを、急に難しく考え過ぎるようになってしまって…」

 オートレースを難解に複雑に考え過ぎてしまい、いつしか自信が霧散して、道に迷った。

 「ハンデも10メートル前になってしまって、周平も自分を思って厳しい言葉を送ってくれました。なにやってんだよ! って言われましたし、周平の家族とはずっと仲がいいので、彼の奥さんにまで心配されてしまいました。もっと、ガツガツやらないとなあとはいつも思っているんですが」

 しかし、最近は吹っ切れてきたという。「ベテランの掛川和人選手が取り組んだように、自分も今風というか、最近はやりの乗り方を取り入れています。もう、10年以上やって来ましたからね。一からやり直すのではなくて、形は残しつつ、新しいものを入れています。でも、自分は本当に幸せです。師匠も周平もみんなが心配してくれて、支えてくれる。厳しいことを言われているうちが花です。心にヒシヒシと伝っていますし、結果を出していきたいですね!」

 2日目の5Rは岩田の持ち味がフルに生きまくった。自慢のダッシュ力で先制すると、道中は快速を発揮して、きっちり6周回を押し切った。岩田にはスタート力がある。雨も乗る。周囲の環境にも超恵まれている。あとは、そのまぶしい人間力をどう有用活用して、結果に、勝利に結び付けていくかだ。

 ロッカーに戻ってくると、青山も佐藤摩弥も自分のことのように岩田の快走を喜んでいた。なかなか心を鬼にできる環境じゃないかもしれない。でもいつか、栄光目がけて、がっつきにがっついて、えげつなく1着にこだわり切るオニヒロを見てみたい気はします。(淡路 哲雄)

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