◆第105回全国高校野球選手権記念大会最終日 ▽決勝 慶応8―2仙台育英(23日・甲子園)
慶応(神奈川)が昨夏Vの仙台育英(宮城)を下し、1916年の第2回大会以来、107年ぶり2度目の優勝を果たした。慶応は甲子園球場では初の頂点で作新学院(栃木)の54年ぶりを大幅に更新する最長ブランクVとなった。
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慶応は初回、1番・丸田湊斗の決勝戦史上初となる先頭打者本塁打が飛び出すなど2点を先制。2回にも丸田が右前適時打を放ち、1点を追加した。
3―2の5回、7番・福井の左翼線を破る適時二塁打、代打・安達の左前適時打、2番・八木の右前適時打など打者9人の猛攻でこの回一挙5点を奪った。
投げては先発左腕・鈴木が2回と3回に1点ずつ失点するものの要所で踏ん張り、逆転を許さなかった。5回からマウンドに上がったエース・小宅がこの日も安定した投球を披露し、相手に流れを渡さなかった。
9回にはプロ通算525本塁打の清原和博氏の次男・勝児が代打で登場。四球に終わったが満員の甲子園は沸き返った。
試合前から期待は最高潮だった。指定席チケットは発売から1時間、外野席も全て完売。超満員の大観衆に見守られながら、夏のドラマがついに最終章を迎えた。
決戦前日。慶応・森林貴彦監督は普段通り、汗を流すナインへと気軽に声をかけ、笑顔でコミュニケーションを取った。1世紀以上も開かなかった歴史の扉に手をかけても、指揮官は平常心を貫いた。
「107年ぶりというのは聞いたことがないので。歴史の重みが重すぎて、ピンと来ていないのが正直なところです。それだけ長くブランクが空いているところに、今のチームで挑戦ができるのは、最高の喜び。明日は思い切りチャレンジしたいと思います」
仙台育英の存在がこのチームを強くした。今春センバツでは延長10回タイブレークの末、1―2で惜敗。チームは初戦敗退となった。森林監督は「成長と変化」をテーマに掲げ、スタメンを白紙に戻し、選手間の競争を促した。ナインはたくましさを増し、夏の甲子園を席巻するまでに至った。
「仙台育英さんの守備力とか、投手力が基準になって、その投手からどうやって点を取るのか、その球をどう打ち返すかということで練習してきました。高い基準を肌で感じたことで、この夏に向けて私たちも大いに成長できた。春の敗戦があったからこそ、今があると感じます」。雪辱の思いと陸の王者のプライドを灼熱の聖地にぶつけ、ついに栄冠をつかみとった。