撮影終了、その場に崩れ落ちた…ウルトラマンコスモス・杉浦太陽インタビュー〈3〉

スポーツ報知
2011年、ウルトラマンコスモスの決めポーズを披露する杉浦太陽(カメラ・頓所 美代子)

 ウルトラマンの生みの親であり、日本映画界の“特撮の父”と呼ばれる円谷英二氏の生誕100周年記念として制作されたのが、ウルトラマンコスモス(01年7月~02年9月放送)です。「子供が見ているから」との理由で、決して怪獣が血を流すような作品を撮らなかった円谷英二。その慈愛の精神を引き継ぎ、コスモスは怪獣と人間の共存を目指し、(基本的には)怪獣を殺さない―というコンセプトで制作されました。スポーツ報知では、放送10周年を迎えた2011年に主演・春野ムサシを演じた杉浦太陽を取材。「僕にとっては『七夕の願い』がかなっての出演だった」と振り返ってくれました。今回、このインタビューを3回に渡ってWEBのみ再掲載。(文中敬称略)

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 当時、車の運転シーンは杉浦が吹き替えなしで撮影していた。片輪走行をしたり、サイドブレーキを一気に引いてスピンしてみたり…富士の樹海でのロケでは、ジグザグの道を急ハンドルを何度も切りながら走り抜けたという。

 「スピンして急ブレーキで止まるシーンでは、カメラさんが『ここに(カメラが)あるから、ギリギリで止まってね』なんて簡単に言うんですよ(笑い)。確かに運転は嫌いじゃないけど、カメラに当てたら大変だし、冷や汗をかきっ放しでした。今、『―コスモス』の映像を見ても、運転シーンはほとんど僕の顔が映っています」

 「TEAM EYES」の隊員服を3着、使用していたそうだが、走り回り、転げ回って、破れたり、汚れたりでコスチュームを新着するたびに「激しいロケをやってきたんだな」と実感していたそうだ。

 今作では、怪獣たちに取り憑き、凶暴化させる敵役として「カオスヘッダー」【注1】というキャラクターが設定された。最終回。ムサシはカオスヘッダーが心を持った事を知り、悪のライバルをも救おうと決意する。カオスヘッダーから憎しみと怒りを取り除き、コスモスから「真の勇者」である事を認められ、一心同体だった2人が分離する―杉浦は、今もこのシーンの撮影の事が忘れられない。

 「コスモスと正対して、別れを告げるんですが、僕の目の前にはカメラしかないんだけど、その向こうにコスモスの顔がはっきりと見えたんです。『ああ、これで本当に最後なんだな…もう、コスモスとは会えないんだな』そう思うと、何とも言えない気持ちになって…最後の撮影は基地の中、作戦室でのシーンだったんですが、『チェック、オッケー!』の声を聞いた途端、その場に崩れ落ちてしまいました。1年数か月、張り詰めていた糸がプツリ、と切れた感じでしたね。撮影所の行き帰り、家の中でも恒にムサシの事ばかり考えていましたから。主役の責任も感じていたし…」

 ムサシを演じてから月日が経ち、杉浦も今や父親となった。

 「『―コスモス』に出演したことは誇りに思っています。俳優として本当に教えられることが多かった。今、僕があるのは『―コスモス』のおかげです。コスモスの慈愛の心を今度は子供たちに伝えたい…そう思っています」

 慈愛の心を持つ優しきウルトラマン。今、大震災の被災地で苦しむ子供たちに、こうメッセージをくれた(注:2011年6月に取材)。

 「今、人間の力が本当に試されているんだと思う。人間が心を合わせ、力を集めて困難に立ち向かおうとしているのを見守っているのがウルトラマン。そして、みんなの心の中にもウルトラマンはいる。心の光を集めて、笑顔が取り戻せる、輝く未来を目指して前に進もう」

 【注1】宇宙から飛来した発光生命体 他の生物などを侵食し、支配する事から“光のウイルス”と呼ばれる。エネルギーを吸収して実体化する事も出来る。本来は、ある惑星で秩序をもたらすために人工的に生み出された存在で、秩序を守るために全生物の意識を一体化する事を目的にしている。地球に来た当初は怪獣などに取り憑き、またはコピー化して実体化したが、次第に人間の持つ感情に興味を持ち、憎しみの心を覚え、人型の姿で実体化する事が可能となった。

 〇…円谷プロ公式サブスク「TSUBURAYA IMAGINATION」では、有料プランに登録すると「ウルトラマンコスモス」のほか。劇場版「ウルトラマンコスモス THE FIRST CONTACT」などウルトラマンシリーズ(一部を除く)がいつでも見放題となっている。ファン必読の読み物や、ここでしか見られない配信限定作品など、オリジナルコンテンツも満載。

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