ラグビーW杯フランス大会は9月8日に開幕する。スポーツ報知では「Our Team 桜の戦士たち」と題し、各ポジションの注目選手を紹介。第2回はフッカー坂手淳史(30)=埼玉=。
4年前とは立場が違う。2大会連続のW杯を前に坂手の言葉には力がこもる。「選ばれてうれしいが、19年の時とは気持ちが違う。責任だったり、本大会ではどう戦っていくのか。そういう部分を強く思う」。初出場した19年大会は主に控えに回ったが、その後、主力となり22年には日本代表で主将も経験。京都成章高、帝京大、リーグワン・埼玉でも主将を務めてきた実直な男は、リーダー陣としての覚悟をにじませる。
お気に入りの言葉は「絆」。6月の浦安合宿から厳しい練習が続く中、「オフフィールドはすごく重要」とコミュニケーションの強化を図った。W杯2大会主将のフランカー、リーチ・マイケル(34)は結束を高めるツールに「カラオケ」などを挙げるが、“坂手流”は食事だ。グラウンド中央で相手と体をぶつけ合う1~5番の位置、代表内で“相撲”と呼ばれる面々に声をかけ、食事をしながら語り合った。「楽しむことは大事。フォワードはスクラム、ラインアウト、モールで重要なパーツになる。絆は深まった」。性格を把握し合えたことで“相撲部屋”内の距離はぐっと縮まった。
19年大会は大黒柱の堀江翔太がおり、2番をつけたのは1戦のみ。ただ、少ないプレー時間でも鋭いスローイングでラインアウトを安定させ、初の8強に貢献した。今年の国内5連戦では3戦に先発。W杯でも所属の埼玉同様に坂手が先発、最年長37歳の堀江が後半途中から出場する起用法が見込まれる。
W杯代表では帝京大の1つ後輩の姫野和樹(29)が主将、1つ上の流大(30)が副主将に就任した。「2人はバランスがいい。昨年の主将の経験を発揮しヒメをサポートしたい」と坂手。チームを支える柱の一人として役割を全うする。(宮下 京香)
◆坂手 淳史(さかて・あつし)1993年6月21日、京都市生まれ。30歳。中学からラグビーを始め、京都成章高3年時にNO8からフッカーに転向。帝京大では2016年の大学選手権7連覇達成時に主将。同年4月にパナソニック(現・埼玉)に入団し、同月の韓国戦で代表初キャップ。W杯代表は19年日本大会、通算36キャップ。スポーツ歴はバレーボール。180センチ、104キロ。家族は妻と1女。
坂手はNO8の経験もある強烈タックラーだ。ラインアウトでの正確なスローイング、スクラムではかじ取りと総合力が高い。大きな瞳でウルトラセブン似からスローイングを「アイスラッガー投法」と評されたことも。京都成章高、帝京大、社会人でも19年からパナソニック(現・埼玉)で主将を歴任。昨年は初めて日本代表の主将も務め、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチも「団結力をもたらす」とリーダーの素質を見いだしており、FW陣を引っ張る。
スクラムではFW8人の最前列の中央に位置し、左右のプロップとともにフロントローを形成。ポジション名「フッカー」はスクラム時に投入されたボールを足で引っ掛けて(フックして)後方に送ることが由来。