【甲子園】慶応・小宅雅己、完封で決勝進出　中学時代日本一「６０校の誘い」から「自由に憧れ」入学

◆第１０５回全国高校野球選手権記念大会第１３日　▽準決勝　慶応２―０土浦日大（２１日・甲子園）

　慶応（神奈川）が土浦日大（茨城）との“サラサラヘア対決”を制し、１０３年ぶり３度目の決勝進出。第２回大会の１９１６年以来、１０７年ぶり２度目の優勝に王手をかけた。２年生右腕・小宅雅己（おやけ・まさき）が７安打完封＆Ｖ打と投打に躍動。前回優勝時は豊中球場で開催されたため、勝てば“甲子園初優勝”となる。夏連覇を目指す仙台育英（宮城）は高橋煌稀から湯田統真（ともに３年）のプロ注目右腕リレーで神村学園（鹿児島）に快勝。今春センバツ２回戦の再戦となる決勝は休養日をはさみ、２３日午後２時から行われる。

　ミットを見つめ、最後の力を振り絞った。２点リードの９回２死一塁。小宅は鈴木大和への初球、１３８キロの直球を外角へ決めた。力のないフライがレフトに上がる。１１８球で７安打完封。１０３年ぶりの決勝進出だ。超満員の一塁側アルプスから地鳴りのような歓声が湧き上がる。勝利の塾歌を笑顔で歌うと、吹き抜ける浜風が心地良かった。

　「決勝進出はビックリです。ここまで来るとは正直思ってなかったんで」

　まずはバットで魅せた。０―０の２回だ。「変化球にキレのある投手。真っすぐを狙おうと」。２死二塁から伊藤彩斗の直球を振り抜くと、鋭い打球はセンターオーバー。喉から手が出るほど欲しかった先制点を自らたたき出した。

　投げてはキレのあるストレートを低めに集め、カットボールで凡打の山を築いた。７回には右ふくらはぎがつり、４分間の治療をしたが、見事に回復。「２点差なので自分がいくしかない。同点まではＯＫという気持ち。好投手と投げ合うのは楽しさがありました」。公式戦の９回完封は自身初。甲子園準決勝の大舞台でやってのけた。

　栃木・宇都宮市の出身。県央宇都宮ボーイズではエースとして３年春の日本一に導いた。「５０～６０の高校から誘いがありました」。多くの強豪校の中から「考えてできる点と、自由な雰囲気に憧れて」慶応を第１志望にした。内申点の満点４５のうち、３８が慶応の最低ラインだが「ギリギリ３８でした」。作文や面接の準備を経て、合格。入学後、驚いた。「思った以上に自由でした」。１年秋から頭角を現した。

　マウンド上、ツーブロックのサラサラヘアが際立った。３回戦の広陵戦の翌日、宿舎近くを散歩中、カット専門店のＱＢハウスで散髪した。「お店を探すのが面倒くさくて…」。慶応ボーイといえども庶民派。いつも笑顔で「必笑」をモットーに掲げる。「ピンチで硬い顔をしているより、周囲も楽になるかなと思うんで」。笑う門には福が来た。

　いざ決勝。仙台育英は今春センバツで先発し、８回１失点と好投。自らの“出世試合”ともいえる相手だ。「ずっと育英さんとやりたいと思っていた。準優勝は悔しい。ここまで来たら優勝したい」。夏のドラマのフィナーレは、笑顔で飾ると決めている。（加藤　弘士）

小宅　雅己（おやけ・まさき）アラカルト

　☆生まれと球歴　２００６年７月１９日、栃木・宇都宮市生まれ。１７歳。５歳から水泳を習い、豊郷中央小２から豊郷中央クラブで軟式野球を始める。豊郷中では県央宇都宮ボーイズに所属し、中３の春に全国Ｖ、夏は全国準Ｖ。慶応では１年秋から背番号１０でベンチ入り。今春の関東大会からエースナンバー

　☆サイズ　１７８センチ、７６キロ。右投左打

　☆家族　両親と兄

　☆叔父さんも甲子園球児　影山崇さんは宇都宮学園（現文星芸大付）で８８年の春夏甲子園に出場

　☆好きな言葉　一期一会

　☆将来の夢　プロ野球選手

　☆好きな選手　ダルビッシュ有（パドレス）

　☆好きな芸能人　西野七瀬

　☆好物　スパゲティ

◆記録メモ　▼チーム３人目の完封勝利　慶応の２年生エース・小宅雅己が完封勝利。選手権では５３年北海戦（１回戦）の川本良樹、６２年長野戦（１回戦）の遠藤凱孝と、チーム６１年ぶり３人目、２年生初。

　また、神奈川勢投手では、１２年今治西戦（１回戦）の松井裕樹（桐光学園）以来、１６人目、２６度目（２年生は松井以来５人目、８度目）。

　２回には自ら先制二塁打。「完封＆勝利打点」は、７１年鹿児島玉龍戦（準々決勝）の大塚喜代美（桐蔭学園３年・先制安打）、８７年江の川、天理戦（１、２回戦）の古沢直樹（横浜商２年・ともに先制本塁打）と県勢３人目、４度目。