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【甲子園】佐々木麟太郎「自分まで回してくれて幸せ」花巻東9回猛攻及ばず涙、140発怪物の夏は不発で幕

9回2死二、三塁、花巻東・佐々木麟太郎が二塁ゴロに倒れゲームセットとなる(カメラ・豊田 秀一)
9回2死二、三塁、花巻東・佐々木麟太郎が二塁ゴロに倒れゲームセットとなる(カメラ・豊田 秀一)
試合後、チームメイトの肩をかりてひきあげる花巻東・佐々木麟太郎(左から2人目)(カメラ・岩田 大補)
試合後、チームメイトの肩をかりてひきあげる花巻東・佐々木麟太郎(左から2人目)(カメラ・岩田 大補)

◆第105回全国高校野球選手権記念大会第12日 ▽準々決勝 仙台育英9―4花巻東(19日・甲子園)

 麟太郎の夏、終わる―。花巻東(岩手)が昨夏覇者の仙台育英(宮城)との“みちのく対決”に敗れ、10年ぶりの4強入りはならなかった。高校史上最多の通算140発を誇る今秋ドラフト上位候補・佐々木麟太郎一塁手(3年)は4打数無安打。今夏をノーアーチで終え、9回は最後の打者となり、涙に暮れた。注目される進路は、プロのほか、進学も選択肢に入れ、熟考する構えであることが分かった。

 顔まで泥だらけにした麟太郎は一塁ベース上で、しばしぼう然と座り込んだ。仙台育英の校歌を聴くと、涙が止まらなかった。9回2死二、三塁。一、二塁間へのボテボテのゴロで執念のヘッドスライディングも、一歩及ばなかった。怪物は「悔しさしかない」と声を絞り出すように語った。

 4回までに0―8の大量リードを許した。初回の第1打席は投ゴロ。4回の第2打席は空振り三振。8回2死一、二塁では割れんばかりの拍手が送られる中で見逃し三振に倒れた。

 9点を追う最終回。4番・北條慎治から始まった攻撃で、ナインは「麟太郎まで回そう」を合言葉に5安打で4点。奇跡への期待は高まったが、4打数無安打で日本一の夢はついえた。「みんなに申し訳なかった。3年間やってきたことが終わってしまう切なさ。いろいろ頭の中で巡ってきた」と唇をかみしめた。

「一番監督さんに怒られた」 「一番、監督さんに怒られた」。誰より涙を流した3年間だった。すでに高校通算本塁打が20本を超えていた1年時のある練習試合。厳しい内角攻めのあげく、死球を受けた。思わず相手投手をチラリと見た。父の洋監督は「何様のつもりだ」と激怒した。泣いたのは、1度や2度ではない。練習中に「もう帰れ」と言われた日もあった。

 20年以上、コーチとして洋監督を支えてきた鎌田茂ヘッドコーチ(71)は「周囲から『自分の子どもには甘い』と言われるわけにはいかない、という思いもあったはず」と父親の胸中を思いやった。それでも「花巻東でなければ、野球を捨てる覚悟」と、父の反対も押し切って入学した息子は、へこたれなかった。

 1年冬には両肩を手術。けがにも何度も悩まされたが、時には痛み止めを飲んで強行出場。入学式から3日後の21年4月10日、大船渡との練習試合で高校1号を放って以来、3年の6月までは冬の練習試合禁止期間を除けば毎月、アーチをかけた。

 今春痛めた背中が6月中旬に悪化。7月は0本塁打に終わり、聖地では長打も打てなかった。最後には「正直うれしかった。自分まで回してくれて幸せ」と涙をぬぐった。141号は幻と終わったが、麟太郎の野球人生は第2章へ突入する。(高橋 宏磁)

 ◆佐々木 麟太郎(ささき・りんたろう)2005年4月18日、岩手・北上市生まれ。18歳。幼少時から野球を始め、小1で江釣子(えづりこ)ジュニアスポーツ少年団に入団。江釣子中ではエンゼルス・大谷翔平の父・徹氏が監督を務める金ケ崎シニアに所属し、2年夏に「4番・三塁」で東日本選抜大会優勝。高校では1年春から「2番・一塁」でレギュラー。184センチ、113キロ。右投左打。家族は両親と妹。

試合詳細
9回2死二、三塁、花巻東・佐々木麟太郎が二塁ゴロに倒れゲームセットとなる(カメラ・豊田 秀一)
試合後、チームメイトの肩をかりてひきあげる花巻東・佐々木麟太郎(左から2人目)(カメラ・岩田 大補)
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