【箱根への道】青学大に「山の神」候補 上り坂TT歴代最高の黒田朝日を原晋監督も絶賛「箱根の山に朝日が昇る!」

スポーツ報知
青学大の菅平合宿恒例の上り坂タイムトライアル。黒田朝日(前列左端)が「区間新記録」でトップを取った

 箱根駅伝では「夏を制する者が箱根を制する」という格言がある。各チームが新春に栄光をつかむため、試練の夏を過ごしている。第99回箱根駅伝で3位だった青学大は8日、長野・上田市の菅平高原で恒例の上り坂タイムトライアルを敢行。期待株の黒田朝日(2年)が歴代最高タイムをたたき出し、5区候補に名乗りを挙げた。

 箱根路の王座奪回を目指す青学大に新たな「山の神」候補が現れた。アップダウンが激しい18キロを1キロ約3分30秒の設定ペースで集団で走り、残り3キロ地点から競走が始まる。標高1322メートル地点から同1535メートル地点まで標高差213メートルの3キロを全力で駆け上がる。23年夏の青学大・菅平激坂王に輝いたのは、3000メートル障害で日本高校歴代3位の記録を持つ黒田だった。

 就任20年目の原晋監督(56)が毎年、菅平高原合宿で重要視する仮想・箱根5区で「区間記録」を11秒更新した。

 「きつかったけど、楽しかった。箱根駅伝5区を走ってみたいです」と黒田は満面の笑みで話した。昨季までの青学大エースのひとりで合宿に特別参加している先輩の岸本大紀(22)=GMOインターネットグループ=を残り約1キロで突き放す圧巻の走りに原監督も興奮した。

 「箱根の山に朝日が昇る! 箱根の山を朝日が上る! その名も青山学院大学の黒田朝日です!」。箱根駅伝往路ゴールを実況する日本テレビアナウンサーのような口調で絶賛した。さらに「第100回箱根駅伝は『初日の出大作戦』かな。レースは1月2日、3日だけど」と冗談交じりに話した。1か月前に1万メートルで28分10秒06の自己ベストをマークするなど好調ながら後輩に敗れた岸本は「黒田、強い。山の神になれるんじゃないですか」と太鼓判を押した。

 青学大は前々回に5区で区間3位と好走した若林宏樹(3年)を擁するが、前回はレース前日に体調不良を訴えて欠場。6区出場予定だった脇田幸太朗(当時4年)が5区に回り、区間9位。急きょ6区を担った西川魁星(当時4年)が区間20位と大苦戦した。「前回、優勝した駒大に5区と6区で大きく負けた。今季、さらに強い駒大に対抗するためには5区と6区が鍵になる」と原監督は軽口から一転、真面目な表情で話した。

 18キロ集団走+3キロ上り坂タイムトライアルは箱根駅伝5区の選手発掘に加え、全選手が心肺機能を限界まで追い込むという狙いもある。さらにゴール地点から宿舎まで約7キロを走って戻る。例年、1回限りの「地獄トレ」を今年は13日に2回目を行う。チーム一のスピードランナー宇田川瞬矢(2年)は昨年、最下位だったが、今年は3分以上もタイムを縮めて5位と躍進した。「次はもっとタイムを縮めます」と意欲的に話す。

 大器と期待されながら2年時まで学生3大駅伝出場が一度もない鶴川正也(3年)、野村昭夢(3年)は順調に練習を消化し、上り坂タイムトライアルでチーム上位と健闘した。「昨年、この時期、練習の消化率は0%でした。今年は絶対に故障せずに夏を乗り切り、学生3大駅伝すべてに出走します」と鶴川は意気込む。

 昨季の学生3大駅伝は、出雲駅伝4位、全日本大学駅伝と箱根駅伝が3位。3冠を果たした駒大に完敗した。主将の志貴勇斗(4年)は「チーム全員が危機感を持って夏合宿に臨んでいます」と表情を引き締めて話す。

 アキレス腱痛のため、現在、別メニューで調整している主力の若林は8月下旬に復帰予定。「夏、自分に勝たなければ、秋以降、ライバルに勝つことはできない。今季、ひとつ間違えればシード落ち(11位以下)もあるが、チームがかみ合ってくれば優勝のチャンスもある」と原監督は力説する。志貴主将も「この夏がターニングポイントになります」と語る。青学大の夏は例年以上に“熱い”。

 ◆黒田 朝日(くろだ・あさひ)2004年3月10日、岡山市生まれ、19歳。玉野光南3年時に3000メートル障害で日本高校歴代2位(当時、現3位)の8分39秒79をマーク。22年に青学大地球社会共生学部に入学。1年時の箱根駅伝では4区に登録されたが、当日変更で出番なし。自己ベスト記録は5000メートル13分56秒02、1万メートル28分33秒62。父の将由さんは法大時代に箱根駅伝3回出場。弟の然(玉野光南3年)は今年の全国高校総体3000メートル障害で高校歴代4位の好記録(8分40秒71)で2位。166センチ、52キロ。

 ◇青学大 上り坂タイムトライアル・トップ10◇

 〈1〉黒田 朝日(2年)

 〈2〉鳥井 健太(1年)

 〈3〉荒巻 朋熈(2年)

 〈4〉田中 悠登(3年)

 〈5〉宇田川瞬矢(2年)

 〈6〉小原  響(4年)

 〈7〉鶴川 正也(3年)

 〈8〉平松 享祐(1年)

 〈9〉野村 昭夢(2年)

〈10〉太田 蒼生(3年)

 ※OBの岸本大紀(GMOインターネットグループ)が2位相当。

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