演出家・マッコイ斉藤氏「初めて作ったVTRでたけしさんがゲラゲラ笑っていたのは今でも忘れない」

スポーツ報知
遊びから生まれた企画もあると明かしたマッコイ斉藤氏

 ◆著書「非エリートの勝負学」

 日本テレビ系「天才・たけしの元気が出るテレビ!」やフジテレビ系「とんねるずのみなさんのおかげでした」などで知られる演出家・マッコイ斉藤氏(53)が「非エリートの勝負学」(サンクチュアリ出版、1650円)で演出家生活の裏側を明かしている。バラエティーの一時代を築いたが「初めて作ったVTRで(ビート)たけしさんがゲラゲラ笑っていたことは今でも忘れない」と振り返った。(太田 和樹)

 黒のバケットハットをかぶり、口ひげを蓄え、時折ニッと笑うマッコイ氏。言葉を一つ一つ紡ぎながら、ゆっくりと口を開いた。

 「面白いって何だろうって考えた時、最高の快感はその場にいる全員が共感すること、100人中100人が笑うことだと思う。でも全員笑わせることってなかなか難しい。だからこそ面白いことに挑戦するんじゃないですか」

 山形の農業高校卒業後に上京。中華料理店のバイトを経て、番組制作会社IVSテレビに転職した。25歳で「―元気が出るテレビ!」でディレクターデビューすると、早朝に出川哲朗を逆バンジージャンプで飛ばすなど型破りな企画を世に放った。

 「ディレクターは『絶対に面白くしなきゃいけない』っていうプレッシャーしかない打席に立たされるんですが、俺みたいな農業高校卒の非エリートはバットを短くもって内野の頭を越える程度のヒットじゃだめ。ホームランしか評価されないんです。打てなかったらテレビ局員さんのアシスタントで終わっちゃう」

 その中で何より自信になったのは、あの大御所が笑ってくれたことだった。

 「自分が初めて作ったVTRでたけしさんがゲラゲラ笑っていたのは今でも忘れないです。あの天才、日本のお笑いのドンが笑ったから、俺は53歳までディレクターとしてやってこられました」

 「―みなさんのおかげでした」では総合演出を務め、出演者に高級車や高級腕時計を購入させる「買うシリーズ」や、じゃんけんで勝った人が飲食代などをおごる「男気じゃんけん」などのコーナーを考案した。

 「『買うシリーズ』は、遊んでいた時に番組の出演者に『時計買った方がいいよ』って勧められて100万円くらいの腕時計を買ったんです。『いいの買ったな』って皆が褒めてくれて。俺もこのクラスの時計を着けられるようになったかって思って店を出た瞬間に『だっせー』ってバカにされた経験から生まれたんです。これを企画に当てはめたら、こんなにヒットするんだと感じましたね」

 苦労も重ねた。アシスタントディレクター時代は、深夜2時に横浜に住んでいるディレクターの送迎をしたり、夜通しでロケに使う小道具を集めたことも。睡眠時間を削って面白いことを考えることは当たり前。椅子や廊下で睡眠を取ることはザラにあった。ロケ弁の手配を忘れたり、車の手配を誤り、先輩ディレクターに蹴り飛ばされたこともあったが耐え続けた。

 「ディレクターになりたい、面白いものが撮りたい、たけしさんに褒められたい。その一心でやってきました」

 第一線で活躍し続けてきたが、体に異変を感じるようになってきたという。

 「高血圧だし、頭は痛くなるし、糖尿病予備軍だし、脳梗塞(こうそく)の疑いがあるとか言われ、右肩がしびれたり、薬ばっかり飲んでる状態。体が壊れかけてきている。ズタボロの状態です」と打ち明けた。

 「だからディレクターは55、56歳までじゃないですか。60、70歳までディレクターなんて、体を壊すからできない。60歳までディレクターをやったら拍手してもらいたい」と、早ければ残り2年でディレクター人生を終えることも示唆した。番組制作会社の社長も務めているが、今は後輩を育てることに尽力している。

 「後はうちの若手が頑張ってくれれば。後輩が天才になってくれれば、それ以上の喜びなんてない。そうしたらもう東京から離れて田舎でそっと暮らしたい。その方が楽しいでしょって思っています」

 引退後は田舎暮らしを目指しているが、地元・山形での生活は希望しない。山形を愛するからこそだという。

 「山形に戻ったら、山形の仕事がしたくなる。山形は魅力ある県の上位ではなく下位の方ですが、そういった県にこそ魅力を感じるんです。だから山形を魅力ある県のベスト10に入れてあげたいとか、仕事がしたくなっちゃいますから」

 周囲には政治家転身を勧める人もいるというが、マッコイ氏は否定した。「政治家なんて全くなるつもりはありません。『県知事になれば』とか言われますけど、県知事になったら3日でほこりが出て退任要求されますよ。だから山形には帰らないです」

 ◆マッコイ斉藤(まっこいさいとう、本名・斉藤誠=さいとう・まこと)1970年2月9日、山形・鮭川村生まれ。53歳。山形・新庄農業高校卒。番組制作会社「笑軍」代表。マッコイの由来は極楽とんぼの山本圭壱が本人の許可なく命名したことがきっかけ。主な担当番組にTBS系「KAT―TUNの世界一タメになる旅!」、テレビ東京系「おねがい!マスカット」など。

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