◆JERA セ・リーグ 広島4×―3巨人(4日・マツダスタジアム)
「昭和は良かった」なんて軽々しく口にするもんじゃない。あの頃、度を越した酷使や投球過多で、どれだけの才能が犠牲になったことか。それでも、実際に目の当たりにするとグッときちゃうよね。
149球の完投勝利。ひょっとしたら戸郷にとって生涯最多の球数になるかもしれない。最終回は志願のマウンドだった。「やめておいたほうが…」と言いたくなる。ただ、真のエースが誕生するときは劇的なイベントが必要だ。「知らぬ間に襲名してました」じゃ盛り上がりに欠けるし、示しがつかない。
例えば菅野。ルーキーイヤーだった2013年。ポストシーズンでマエケンとマー君という当時の「日本トップ2」に堂々と投げ勝った。みんなの予感が確信に変わったんじゃないでしょうか。「これからは菅野の時代だ」と。
でも、戸郷さん。あまり無理はしないでください。いや、余計なお世話だな。そんなヤワじゃない。新人のくせに、優勝がかかった試合で平然と初登板初先発を果たすような男だよ。佐々木朗希が「令和の怪物」なら、宮崎生まれの23歳のことは「令和のバケモノ」と呼びたくなる。
そんなわけで、ドラフト同期には負けられない。しかも、指名順位はこっちの方が上なんだ。タワーマンこと横川です。現状では井上と競わされてるけど、心のライバルは戸郷です。
デビッドソンに一発を食らったけど、調子は尻上がりだった。ところが好事魔多し。「勝負のあや」は残酷だ。勝利投手の権利を手にする寸前での降板。納得できないのは当然だし、納得しちゃいけない。
しかし、あの場面で戸郷や菅野に打席が回ってきたらどうだったか。もちろん代打は送られないはず。山崎伊やグリフィン、メンデスでも続投だと思う。押しも押されも…する。悲しいけどそれが横川の先発陣での現在地だ。ここは与えられたチャンスで結果を出し続けるしかないよね。
原監督も鬼じゃない。絶対に言わないけど「借りが一つ」と思っている…ワケないか。それにしても前夜のエースのように、あそこで「投げさせてください」と直訴してみる手はなかったか。ダメ元でも…って無責任なこと言うなよ。