◆JERA セ・リーグ 巨人4―0中日(30日・東京ドーム)
慎之助さんの代名詞と言えば「最高で~す」。ご存じ、お立ち台での決めゼリフです。これが「定番」となったのは2002年8月11日の広島戦からと言われている。
「最高で~す。それしか出てきません」―。延長10回に放った人生初のサヨナラ本塁打。巨人の東京ドーム通算1000号となるメモリアル弾でもあった。
さらに15日のヤクルト戦でもサヨナラ弾。さらにさらに、その6日後の21日の横浜戦ではサヨナラの、今度は二塁打を放った。
わずか11日間で3度の劇勝を自らが演出。そのたびに「最高で~す」と絶叫するんだから「お約束」にならないワケがない。その後は何度か「封印宣言」もあったけど、この言葉とともに慎之助さんはプロ人生を歩んできた。
ただ、物事には副作用がある。このフレーズ、使い勝手の良すぎるところが玉にキズ。ボキャブラリーの乏しい若手が「これ、言っておけばいいんだろ」とばかりに飛びついた。この風潮がヒーローインタビューの形骸化を招き…って大げさなこと言うなよ。
そんなわけでデミグラス秋広です。堂々の2戦連続勝利打点じゃないか。原監督は5番起用を勝負強さに期待しての「昇格」と説明していた。「ホント? おためごかしでしょ」と怪しんでいたけど、恐るべきタツノリ眼力です。
「長打が見たい」に「山椒になれ」。果てはスポーツ報知からも「頼むぞ、3割ターン」などと書き立てられたり、みんな秋広には厳しすぎるノルマを押しつけがちだ。
まったく、どこのビッグモーターだよ。だけど、ちゃんと期待に応えてくれるから、言いたくなるんだよね。この人の場合、凡退やミスも全てが布石というか伏線に見えるからガッカリしている暇がない。
それにしても、いつ聞いてもすがすがしいな。202センチのお立ち台です。自分の言葉でおごらず、謙虚すぎるということもない。それでいて20歳のフレッシュさも伝わってくる。
将棋の藤井名人や大相撲の伯桜鵬にも通じる大人物の風格。みんな慎之助さんがアレを叫び始めた頃に生まれたということで、「最高で~す世代」とか安直に呼んでみたい。