ベルーナDのダイヤモンドを縦横無尽に駆け回ってほしい。18日に高松渡内野手(24)が川越誠司外野手(30)との1対1のトレードで中日から西武へ移籍した。立浪竜では昨オフから5例目のトレードということもあり、「驚き」というより新天地で活躍してほしい気持ちが強い。
高松は与田政権だった21年に主に代走の切り札として台頭。大島に次ぐチーム2位の15盗塁と開花を予感させた。滝川二(兵庫)時代は圧倒的な俊足から「滝二のイチロー」と呼ばれ、現代野球にフィットしたスペシャリストとしてプロ野球界に名を刻む能力を兼ね備えている。
しかし、ここ2年はけがや不振もあり、22年は51試合で5盗塁、今季は23試合で2盗塁と奮わなかった。特に印象的な試合になってしまったのが、4日の巨人戦(バンテリンD)だ。1点を追う7回1死一塁から宇佐見の右前打で一、三塁と好機が拡大したところで一塁の代走に高松が送られた。同点、一気に逆転…を狙ったが、山崎伊のけん制に反応できずタッチアウト。立浪監督も「結果的に非常に痛いミス。ベンチで『慌てるなよ』と伝えた。本人が一番悔やんでると思うが、一番大事なところで出している」と話し、反撃の流れだっただけに痛いプレーになったのは違いない。
悔しさが凝縮された姿を見た。6日に行われた本拠地での全体練習では終始ヘルメットをかぶり、一塁への帰塁→二塁への盗塁と一、二塁間を延々往復。打撃、守備はせず、走塁練習のみを繰り返した。高松と少しだけ会話を交わした。「あの場面は絶対にアウトになっちゃいけない。逆を突かれたわけではなかった。でも二塁への意識が強くて反応が少し遅れてしまった…。同じことを繰り返さないようにしたい。下手なんで練習するのみです」。反省の言葉が並んだ。
21年のハマスタでは相手の悪送球に反応。一塁から一気に本塁生還し、決勝点をつかむ“神走塁”もみせた。凡走も好走も高松らしさではある。心機一転、西武の入団会見では「一番の武器である足がチームのスローガン。早くチームに貢献したい」と意気込んだ。
高松にとって模範であり、通算378盗塁で球団史のトップに名を刻んだ荒木内野守備走塁コーチも「(ハマスタの走塁も)あいつにとっては普通のこと。まだまだこれから。もっとみんなができないようなことができる選手」と送り出した。現在は2軍で調整中の背番号34。「走魂」を体現するスピードスターとなり、パ・リーグを盛り上げてほしい。(中日担当・長尾 隆広)