◆JERA セ・リーグ 巨人11―5中日(28日・東京ドーム)
得点圏打率では決して測ることのできない。そんな勝負強さがある。我らが長嶋さんです。意外なことに得点圏では、王さんの方が高い数字を残している。でも、ミスターは持っているんだよな。
節目の試合や絶対に負けられない大一番。こんな時の長嶋さんは無双だ。天覧試合や「10・8決戦」を見よ。プレッシャーがあればあるほど、いや、なけりゃ燃えないという特異な体質の持ち主です。
「僕は、VIPの方がおいでになった時のアベレージは8割近いです」―。第1次政権後の浪人時代。作家のつかこうへいさんとの対談(現代文学の無視できない10人=集英社)でのコメントだ。
もちろんNPBの公式記録には残っていない。あくまでも自己申告。そもそもVIPの基準って何なんだよ。いや、異議を唱えるなんて許さない。冒とく行為だ。僕らは深くうなずいていればいいんです。
そんなわけで、お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません。ようやく坂本勇人が帰ってきてくれました。「僕は、復帰戦でのアベレージは8割近いです」とは言っていないけど、4割を超えているんだって? だけど、この勝負強さはブーイングだよ。
チームに迷惑をかけ、ファンをガッカリさせ続けてきたんだ。もっと粛々と地味に、うつむきながら戻ってこれないものか。いきなりヒーローになってどうする…というのはウソ。だけど、最近はずっと考えていた。「勇人からの卒業」みたいなことです。
原監督も言っていたけれど、頼り過ぎるのはヨロシクない。ここらで「ポスト坂本時代」の予行演習をやってもいい頃か。都合良くルーキーが台頭。「勇人がいないなら門脇を使えばいいじゃない」とマリー・アントワネット的に割り切って…いや、これができないんだ。この男がいるといないじゃ、東京ドームの空気が違うから。ホント罪なヤツだよ。
それにしても181回目の猛打賞ですか。ノムさんを超えて歴代単独4位に浮上。次は長嶋さんが待っている。「自分の記念日には強い」という不思議なDNAを受け継ぐ坂本。どんなゴージャスな舞台で大先輩に並んでくれるのか。