◆第105回全国高校野球選手権記念福岡大会▽決勝 九州国際大付2―1東筑(27日・久留米)
福岡では、昨春のセンバツで“2年生四天王”と称されたプロ注目スラッガー・佐倉俠史朗一塁手(3年)が主将を務める九州国際大付が東筑を2―1で下し、2年連続9度目の甲子園出場を決めた。すでに出場を決めている花巻東(岩手)の佐々木麟太郎(3年)らとともに、四天王の聖地そろい踏みが現実味を帯びてきた。千葉では専大松戸、群馬では前橋商がサヨナラで優勝。決勝10大会のうち8大会が1点差と、各地で激闘が相次いだ。
勝利の瞬間、佐倉は一塁からマウンドに向かって駆け出した。仲間と共に拳を突き上げ、喜びを分かち合った。「(甲子園は)野球人としても、人としても成長させてもらえる場所。うまくいかない時もあったが、甲子園では暴れたい」。福岡大会は一発こそ出なかったが、安定した打撃でチームをけん引。聖地でライバルたちと戦うイメージを膨らませ、鋭い視線を向けた。
打線のど真ん中で別格の存在感を放った。「4番・一塁」で出場し、3回には1点を先制した後、2死から四球で出塁し、次打者の中越え二塁打で一気に本塁生還。6回には痛烈な右翼線二塁打を放ち、場内からどよめきが起きた。全7試合で4番に座り、23打数10安打の打率4割3分5厘。結果と背中でチームを引っ張った。
苦い記憶と共に、鮮烈に印象に残るシーンがある。昨夏の甲子園。3回戦で浅野翔吾主将(現巨人)が率いる高松商に1―2で敗れた。一塁の守備に就いていた時、ベンチで懸命に声を出し、ナインを鼓舞する浅野の姿が目に入った。プレーだけでなく、強烈なキャプテンシーにも感銘を受けた。新チームの主将を任された佐倉は「自分もそういう存在になれたら」と目標に掲げ、理想を追いかけてきた。
決勝前日の26日には“四天王”の一角、花巻東の佐々木麟が甲子園出場を決めた。高校通算140発の麟太郎に対し、自身は31発。「レベルが違い過ぎる」と謙遜したが、「見習う部分が多い。少しでも吸収することができたら」と同じ左の強打者との対戦を心待ちにした。大阪桐蔭の前田悠伍、広陵の真鍋慧(けいた、ともに3年)も勝ち残っており、「そういうチームを倒して日本一になりたい」と目を輝かせた。
本塁打へのこだわりは人一倍強く、「広陵の中村奨成さんの(甲子園)6本塁打を超えたい」と宣言した。昨夏、「また、帰ってくる」と誓った夢舞台。ライバルの存在が、アーチストとしての本能を呼び起こしそうだ。(加藤 博之)
◆佐倉 俠史朗(さくら・きょうしろう)2005年11月3日、福岡・久留米市生まれ。17歳。小学1年から野球を始める。宮ノ陣中ではフレッシュリーグの球道ベースボールクラブに所属し、2年時にジャイアンツカップに出場。高校では1年春からベンチ入りし、同秋から4番。高校通算31本塁打。183センチ、101キロ。右投左打。