◆JERA セ・リーグ 阪神6―9巨人(27日・甲子園)
歴史に「もしも…」はないそうです。確かに無意味だし現在が全てだ。でも高校野球を見ていると、どうしても「運命の不思議」を考えたくなる。
2012年の岩手大会決勝は盛岡大付と花巻東の間で争われた。花巻東のエースは大谷翔平。すでに全国というか全世界から注目される存在だった。
3回1死一、二塁。盛岡大付の4番打者が大谷の148キロを捉えた。打球は左翼ポール際を抜けて外野芝生席へ。ファウルのようにも見えたが、三塁塁審は右腕を回した。花巻東はベンチから伝令を3度も出し猛抗議。球場内は騒然となり背番号1も苦笑いで球審に歩み寄ったが、判定は覆らなかった。
結果的にこの3ランが勝負の分かれ目に。「自分の力が足りませんでした」と大谷は号泣した。試合後、審判に代わって取材を受けた岩手県高野連関係者は「判定が全てです」とコメント。二刀流の最後の夏が終わった。
もしも、あの打球がファウルと判定され、花巻東が甲子園に出場していたらどうなっていたのか。仙台育英に先駆け、東北に初の優勝旗をもたらしたかもしれない。一方で悪夢も。成長途上の体で投打に奮闘。選手生命に関わる故障を負った可能性だってある。
それでも確かなことは一つだけだ。11年後の大谷は史上最高の選手として存在しているってこと。微妙な判定で人生は変わる。変わるけど、どう変わるのかは誰にも分からない。
そんなわけで甲子園で勝つって、こんなシンドイものなのか。でも、これが原監督言うところの「ねじりハチマキ」だ。ベンチ全員のワンチーム野球。その原動力は長野だった。
秋広も岡本和も吉川も偉い。でも個人的には、この人に最も「巨人の魂」を感じてしまう。由伸さんや慎之助さん、そして亀井さんが醸し出していた、あの何とも言えない雰囲気です。
広島への移籍は本人も思うところがあったはず。もしも巨人に残留していたなら、どんな4年間になったのか。優勝に貢献? それとも世代交代の波にのまれユニホームを脱いで…違うな。言えるのは、巨人にとって長野は不可欠のピースだということだけ。今さらですが、帰って来てくれてありがとうございます。