井上尚弥の父・真吾トレーナー「ナオ、ヤバイよ」転向初戦で4階級制覇するなんて…不安は練習で自信に変える挑戦者 

スポーツ報知
5回、井上尚弥がフルトンの顔面に右ストレートを決める(カメラ・小林 泰斗)

◆プロボクシング ▽WBC、WBO世界スーパーバンタム級(55・3キロ以下)タイトルマッチ12回戦 ○同級1位・井上尚弥(8回TKO)統一王者スティーブン・フルトン●(25日、東京・有明アリーナ)

 王者スティーブン・フルトン(29)=米国=を破りWBC&WBO世界スーパーバンタム級王座を獲得した井上尚弥(30)=大橋=。昨年12月のバンタム級世界4団体王座統一に続き、世界4階級制覇の快挙を達成した。父の真吾トレーナー(51)はスポーツ報知に手記を寄せ、大一番に向けた心境や息子の成長を見守る父の思いなどをつづった。

 世界4階級制覇、おめでとう。ひとことで言うなら「ナオ、ヤバイよ」だよ。間違いなく成し遂げると確信していたけど、階級を上げて1戦で実現させた。父としてはいつも試合になると心配してドキドキするが、ナオはワクワクしていたね。

 トレーナーとしての自分は、練習やフルトンの映像など全て見て確認ができていた。だから、「勝つ」としか言いようがないと思っていた。試合前の強がりとか、アピールとかではない。体重が上がったぶん、動けるからオーバーワークになることを気にしたが、しっかり休みを取ることも忘れなかった。それが意識の高さ。フルトンを意識して、一つ一つ考えながら、しっかり対応できていた。練習でも大振りにならないよう、丁寧にやっていた。チャンスの時こそ冷静に。拳のけがの影響も全くなかった。

 意外だったのは、初回のリードの差し合いでフルトンのパンチが届かなかったこと。これなら大丈夫と落ち着いた。体格のことが言われたが、同じ体重で同じ条件。楽ではないが、普通に勝つと思っていた。劣っているところは何一つなかった。フルトンが「下の階級から上げてきた選手だから」と思っていたら痛い目に遭うよ、ナオと体を合わせるとビックリするよと感じていた。相当強いよって。いい練習ができて、本人の意識の高さを知っていたから、こんなことが言える。

 不安に負けそうになったことなど、アマチュアの時から一度もない。そんな気持ちになったらボクシングなんてできない。不安は練習で自信に変える。ナオは、いい意味でプレッシャーが大好き。きつい練習を毎回やり切るから自信しか生まれない。今回はチャレンジャーという立場も大きかった。燃えていたね。

 プロになる前、アルバイトをやらせたことがある。荷物を梱包(こんぽう)して仕分けしたりする仕事で、プロの世界に入ったので1か月ほどで辞めたけど、社会に出たことは忘れないように、と胸に刻ませた。どこかに勤めることで、そこのルールで仕事して、お金をもらう、ということを味わってもらいたかった。社会って甘くないじゃないですか。その気持ちはボクシングに生きてくるんだから。

 2試合で4団体統一ですか? そこは大橋秀行会長が動いてくれると思う。会長は、皆が沸く試合を組んでくれる。だからナオも、自分も、その思いに対して応えるだけです。

 ◆井上 真吾(いのうえ・しんご)1971年8月24日、神奈川・座間市生まれ。51歳。有限会社明成塗装代表取締役を務め、不動産業などの実業家の顔を持つ一方、大橋ジムにトレーナーとして所属し、息子の井上尚弥、拓真兄弟、おいの浩樹らを指導している。2014年には、最も功績を残したトレーナーをたたえる「エディ・タウンゼント賞」を受賞した。

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