曇りがちだった巨人・直江大輔投手(23)の表情にようやく笑顔が戻っていた。6月25日のイースタン・西武戦(カーミニーク)に7回から4番手で登板し、2回無安打無失点、1奪三振と好投。「良かったです。やっと取り組んできたことがかみ合ってきたかな」。自己最速を2キロ更新する152キロをマークした直球を制球良く投げ込み、圧倒した。
浮き沈みの激しいシーズンを過ごしている。開幕1軍をつかんだ今季、5月14日に出場選手登録を抹消されるまで16試合に登板して防御率3・86。一時は勝ちパターンの一角を担い、6ホールドを挙げて苦しいチームの中で奮闘した。しかし、疲労が蓄積した影響などもあり調子を落とし、2軍へと合流した。
そこから、もがき苦しむ日々が始まった。コンディションはなかなか上がらず、フォーム修正も思うように進まない。当然、投げている球も納得のいくものではなかった。「もどかしいです。結局、自分に甘いからですかね」。6月上旬、練習を終えたばかりの若武者は、苦々しそうに吐露した。
うまくいかないことが続けば、自暴自棄にもなるし、現状から逃げたくもなる。それでも、自問自答を繰り返しながら、練習していくうちに、現実から目を背けようとする自分と逆境に立ち向かう自分がいることに気がついた。
「たとえ練習をしっかりやっていても、結果がでないと自分がしっかりやれていないからだと思ってしまって、心も体も落ちてしまう時がある。でもそこで止まらずに考えて考えて、練習もやれるだけやることが必要なのかな」
これまでも、けがや勝てない日々を乗り越えてきた右腕は苦悩する中で、今回も、必死に前へ歩みを進めているように感じる。
まだ成績的に安定せず、1軍再昇格は果たせていない。ただ、もう迷いはない。残りのシーズンでチャンスをつかむために、何より自身の成長が大事だと理解している。「いつ(1軍に)呼ばれてもいいように準備していきたい」と言葉にも力が込もる。たくましさが増してきた右腕の後半戦の逆襲に期待したい。(巨人ファーム担当・宮内 孝太)