“秒殺”川嶋勝重とともに2年越しのリベンジ“秒撮”~スポーツ報知カメラマンが見た瞬間の記憶~

スポーツ報知
WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦 1回、挑戦者・川嶋勝重(右)の右フックが王者・徳山昌守の顔面を捉え、ダウンを奪った(カメラ・安藤 篤志)

◆2004年6月28日、WBC世界スーパーフライ級タイトルマッチ12回戦 王者・徳山昌守VS挑戦者・川嶋勝重(安藤篤志カメラマン)

 ここまで8連続防衛中のチャンピオンがマットに倒れた。開始90秒、挑戦者の強烈な一撃がKO劇を生んだ。王者・徳山に川嶋が挑んだ一戦、TKO勝ちで新チャンピオンが誕生した。

 久しぶりのリングサイドからの撮影に緊張していた。ボクシングは難しい。パンチを繰り出した瞬間にシャッターを押しても間に合わない。連写しても撮れたためしがない。ボクサーの視線、フットワークや上半身の筋肉の動きを見ながら予測してタイミングを計る。撮影位置も選べないため、見える見えないは運も作用する。何千枚撮ってもパンチの当たる瞬間を撮影するのは至難の業で、世界戦ともなればその速さはケタ違いとなる。

 メインイベント前の試合で練習したが、どうにもうまく撮れない。不安が消えぬまま世界戦が始まった。連続防衛中のチャンピオンの動きに合わせてシャッターチャンスを狙ったが、初回のゴング直後から激しい打ち合いに。両者互角のラウンド半ば、川嶋が大きくステップして沈み込んだ瞬間、反射的にシャッターを切った。

 挑戦者の大きく振り上げた右フックが左顎にヒット、腰から崩れ落ちた徳山をよけるように川嶋がジャンプした。その後も連打で再びダウンを奪い、勝負はわずか107秒で決着した。当時、日本の世界戦史上2位、スーパーフライ級では世界最短のKOタイム。正直、撮れた感触はなかったが、見返してみると川嶋の拳が徳山の顔面に食い込む一瞬を捉えていた。

 川嶋はその前年に徳山に挑み、判定で敗れていた。その時もリングサイドで取材していたが、納得のいく写真は撮れていなかった。1年後の“再戦”で、川嶋とともに私もリベンジを果たすことができた。

 【2004年6月29日付紙面より】

 挑戦者・川嶋勝重(29)=大橋=が衝撃の107秒で世界の頂点を極めた。8連続防衛中の王者・徳山昌守(29)=金沢=と昨年6月以来1年ぶりの再戦に挑み、開始90秒右フックでダウンを奪い、1分47秒レフェリーストップによるTKO勝ち。日本ボクシング界にニューヒーローが誕生した。

(年齢と所属は当時)

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