「満を持して」製作されたわけではなかった!?「風の谷のナウシカ」

腐海の生物たちと心を通わせる能力を持つナウシカ(C)1984 Studio Ghibli・H
腐海の生物たちと心を通わせる能力を持つナウシカ(C)1984 Studio Ghibli・H

【明日の金ロー】

 夏の金曜ロードショー(後9時)といえば、恒例の”ジブリ祭り”。今年は、宮﨑駿監督の10年ぶり新作「君たちはどう生きるか」が14日に公開されるのに合わせ、3週にわたって過去作品が放送される。7日は第1弾として「風の谷のナウシカ」(1984年)がノーカットで登場。金ロー以外も含めると、同局で本作が放送されるのは今回が何と20回目! これはジブリ作品の中で最多となる(第2位は「天空の城ラピュタ」と「となりのトトロ」の18回)。

 もはやストーリーを振り返る必要はないかとも思うが、念のため。物語の舞台は、戦争で現代文明が滅んだおよそ1000年後。世界は「腐海(ふかい)」と呼ばれる有毒の瘴気(しょうき)を出す森が広がり、衰退した人間の生存をおびやかしていた。

 そんな中、「風の谷」に住むナウシカは、腐海の謎を解き明かそうとしていた。ある日、風の谷に輸送機が墜落。大国同士の争いに巻き込まれた風の谷が、腐海に住む生物たちに襲われそうになる中、ナウシカは彼らと心を通わせようとする―。

 若い視聴者の中には知らない人も多いかもしれないが、本作は元々、月刊アニメ雑誌「アニメージュ」の連載として始まった。宮﨑監督は、連載するにあたっての条件の一つとして「アニメ化を前提として描かない」を提示したという。ただそれは「アニメ化の否定」ではなく、「漫画を描くのならば、漫画でなければできないことを目指したい」という意図だった。

 その後、イベントで上映する10分間の映像作品などのプランを経て映画化が決まったが、宮﨑監督は、もろ手を挙げて喜んだということではなかったようだ。後のインタビューでは「『ナウシカ』しか映画にするものがないという、映画の仕事の唯一のチャンスだったから。その時に徳間書店が『ナウシカ』を作れと言って来た。これしかないなら、やるしかないと判断したわけですよ。その時には成算がまったくなかった」と振り返っている。自分を卑下する宮﨑監督独特の言い回しもあると思うが、アニメ映画史上に残る傑作は、こうして世に送り出された。

 ちなみに、ご存じの方も多いと思うが、「君たちは―」は徹底的に秘密主義が貫かれており、事前の宣伝はゼロ。タイトルとポスターのイラスト以外は全くと言っていいほど情報が出ていない。配給する東宝の宣伝関係者も完成した作品を見ておらず、ボイスキャストも一部しか知らないという。

 ハリウッドでも「極秘撮影」とされながらも、関係者から情報が少しずつ漏れ、事前に暴露されることが多いことを考えると、ここまで徹底的に隠されているのは異例中の異例といえる。そんなところから「『君たちは―』は、実は『ナウシカ2』なんじゃないか?」という話も出ているほどだ。その「答え」は来週明かされることになる。(高柳 哲人)

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