山田杏奈「役に近づけるか、過程を楽しむ」 今年デビュー10周年 体当たりの“山女”役

スポーツ報知
「映画館で見て映像の力を感じてほしい」と語る山田杏奈(カメラ・堺 恒志)

 女優の山田杏奈(22)が、公開中の主演映画「山女」(福永壮志監督)で体当たりの演技を見せている。民俗学者・柳田國男の「遠野物語」に着想を得た作品。父が起こした窃盗事件の罪をかぶって村を去り、山奥へと足を踏み入れた娘・凛を熱演。ボサボサの髪、土だらけの顔や手足、時間を重ねる度に主人公と同化していった。山田が今作に懸ける思い、女優デビュー10周年の心境を語った。(加茂 伸太郎)

 監督から「もう1回やってみましょう」の声が掛かる。山田は裸足(はだし)になって、何度も何度も山中を歩いた。髪は崩れ、手足や頬は土だらけ。撮影日数を重ねる度、山女に近づいていくのが分かった。

 「汚れていくことって、凛になっていくことじゃないですか。爪が真っ黒だし、洗っても落ちない。それがうれしくて。よし、よし、よし。育ってきたぞ!と思いながらやっていました」

 舞台は18世紀後半の東北地方。柳田國男の「遠野物語」に収められた岩手・遠野地方に伝わる民話から着想を得た。山田は、先々代が起こした火事の責任を負って田畑を奪われ、卑しい身分にされた17歳の凛を演じた。飢えに耐えきれず、米を盗んだ父(永瀬正敏)から悪事をなすり付けられ、罪をかぶって村を去ることを決心。神聖な森へと足を踏み入れる。

 クランクイン前、監督とプロデューサーから今村昌平監督の映画「楢山節考」(1983年)を見るように指示された。「(坂本スミ子さんが)役作りで前歯を抜いたと聞き、そんなことがあるのかと…。鮮烈でした。その時代を描く難しさを感じたけど、精いっぱい演じようと決めました」

 圧倒的な自然を前に、あまりに無力な村社会。閉鎖性と集団による同調圧力、身分や性別の格差、信仰の敬虔(けいけん)さと危うさを浮き彫りにし、ヒロインが自らの意志で人生を選び取るまでが描かれる。

 「凛は父親と弟と3人暮らしで妻の役割、母の役割も果たさなきゃいけない。自我を持っているけど、それを出すことさえ許されない過酷な環境。村の1つのパーツでいなきゃいけない残酷さ。自分があの時代、あの環境下にいたら『逃げる』という思考になれるのか…。凛は山に入る覚悟を決めたけど、諦めているかもしれないですね」

 撮影は20年秋、山形県内で1か月かけて行われた。宿舎でも役作りを徹底。「においがつくものは避けて、お風呂上がりのトリートメント、ボディークリームはやらなかったです。リップを塗るのもやめて、唇もカサカサにして。そういう部分からやっていかないと、どうしようもならないと思いました」

 東北特有のクセの強い遠野弁も「より深く凛を演じられる要素になる」とプラスに捉え、積極的に習得した。「音声データをいただいてずっと聞いていました。普段の言葉遣いとは違うけど、身に付ければやりやすくなる。『苦だった』より『方言があってよかった』という気持ちでした」

 11年に「ちゃおガール☆オーディション」でグランプリを受賞し、10歳で芸能界入りした。13年にTBS系「刑事のまなざし」で女優デビュー。近年は、21年に映画「樹海村」「ミスミソウ」に主演。22年11月に「夏の砂の上」で初舞台を踏むなど、着実に活躍の場を広げている。

 「憑依(ひょうい)型ではないので、自分を足したり引いたりしながら役を作っています。機械でできる仕事じゃないからこそ、いただいた役といい付き合い方をしてやっていくしかない。何年たっても(演技に)納得できる日は来ないと思うけど、それが芝居の面白さ。どうやって役に近づけるか、過程を楽しんでいます」

 今年、女優デビュー10周年を迎えた。今は芝居が好きでたまらない。「気負うわけでもなく、(必要以上に)頑張るぞ!と思うわけでもなく。(初心を忘れず)ずっと第一歩という感じです。この仕事に限らずですけど、好きなことを仕事にできるってあまりないこと。好きだな~、楽しいな~という気持ちを大切にしながら、これからも演じていきたい」

 山田の視線の先には、明るい未来が開けている。

 ◆山田 杏奈(やまだ・あんな)2001年1月8日、埼玉県出身。22歳。11年「ちゃおガール☆オーディション」グランプリ。13年TBS系「刑事のまなざし」で女優デビュー。18年「ミスミソウ」で映画初主演、「幸色のワンルーム」でテレビドラマ初主演。21年映画「樹海村」「ひらいて」主演。22年WOWOW「早朝始発の殺風景」主演。特技は習字。159センチ。

 ◆山女 18世紀後半、未曾有の大飢饉(ききん)に襲われた東北の村。先代の罪を負うも、たくましく生きる娘・凛(山田)。ある日、父親(永瀬)が村中を揺るがす事件を起こす。凛は父の罪をかぶり、禁じられた山奥に足を踏み入れる。そこで伝説の存在・山男(森山)と出会い、運命が動き出す。98分。

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