歌舞伎俳優の中村橋之助、中村福之助、中村歌之助による自主公演「神谷町小歌舞伎」が東京・浅草公会堂で2日まで上演している。
中村芝翫、三田寛子夫妻の間に生まれた成駒屋3兄弟が「いつか大歌舞伎に昇格する」という思いを込めて開催する初の自主公演。1日昼の部に観劇したが、劇場に入って、まず気付いたのが「歌舞伎とは思えないほど、客層が圧倒的に若い」ということ。3兄弟と同世代の20代くらいの若者が多く、家族連れの姿も。約1000席の浅草公会堂は満席で活気にあふれていた。
最初に橋之助が金屛風の前に登場し、口上を述べた。続いて中村芝歌蔵、中村橋三郎による演目解説。国立劇場の「歌舞伎鑑賞教室」と同様、軽妙なトークによる演目の紹介に加えて、橋之助の親友である花田優一氏とコラボしたオリジナルTシャツやパンフレットなど公演グッズの宣伝も行い、場内の空気を和ませた。
最初の演目は「弁天娘女男白浪(べんてんむすめめおのしらなみ)」。歌之助が変装した武家の娘から弁天小僧菊之助の本性を現して発する名ゼリフ「知らざあ言って聞かせやしょう」では、場内は喝采に包まれ、「成駒屋!」の大向こうが響いた。歌之助が生まれ持った真面目な性格が芝居に反映されているのか、盗賊にしては上品に感じた。福之助の南郷力丸には安定感があり、橋之助の日本駄右衛門には重厚さが感じられた。
続く「高坏(たかつき)」では橋之助が次郎冠者、中村橋吾が高足売を演じた。酒に酔った次郎冠者の表情、軽快なステップは、橋之助が尊敬する中村勘九郎を想起させた。橋吾も持ち前の口跡の良さが見事に発揮されていた。観客の拍手は温かく「3兄弟を応援しよう」という姿勢が感じられた。
「完全にホームグラウンド」と言える劇場の雰囲気は自主公演ならでは。今後、歌舞伎座のような大劇場で「弁天小僧」や「高坏」を演じる際にも、この日の経験が大きな糧になるだろう。(記者コラム・有野 博幸)
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