箱根駅伝「寺田交差点」の伝説をつくった寺田夏生氏が皇学館大監督に就任「速い選手ではなく強い選手になってほしい」

スポーツ報知
2011年箱根駅伝で国学院大のアンカーを務め、10位でゴールした寺田夏生氏

 皇学館大は1日、駅伝競走部の新監督として国学院大、JR東日本で活躍した寺田夏生氏(31)が就任したことを発表した。

 寺田監督が大学ホームページで発表したコメントは以下の通り(原文まま)。

 「令和5年7月1日付で皇學館大学駅伝競走部監督に就任いたします寺田夏生です。大役を任せていただき大変身が引き締まる思いでございます。監督不在という大変厳しい中、選手たちそれぞれがチームのために考え、行動してくれたことに感謝したいです。

 これからは選手たちとしっかりとコミュニケーションを取り、これまでの駅伝競走部の歴史を大切にしつつ、また新たな歴史を選手たちとともに創っていきます。

 選手たちには『速い選手ではなく強い選手』。そして、陸上競技を通して活動拠点である伊勢市の皆さまをはじめ、三重県、全国の多くの人から応援してもらえる選手になって欲しいと考えていますし、私はそういうチームを目指します。

 これから新しいチームを作っていくにあたって、私や選手たちだけではどうしても力不足、限界があります。ぜひ皇學館大学卒業生の皆さま、駅伝競走部OB・OGの方々、そして駅伝競走部のファンの皆さまにもご支援ご協力、そして激励をいただければと思います。

 最後になりますが日頃より皇學館大学駅伝競走部へのたくさんのご声援、本当にありがとうございます。これから選手たちとともに決めた目標達成に向かって、一緒に全力で取り組んでいきますので、今後とも熱い・温かい多くのご声援をどうぞよろしくお願いいたします」

 三重・伊勢市の皇学館大はキャンパス近くにゴールする全日本大学駅伝の出場を目指し、2008年に駅伝競走部を創部。前任の日比勝俊監督(57)が今年3月末で退任し、以来、監督が不在で学生主体でチーム活動を続けていた。

 寺田氏は長崎・諫早高を卒業後、2010年に国学院大に入学し、11年箱根駅伝では1年生ながらアンカーの10区を担った。11位でタスキを受けると、シード権(10位以内)争いに参戦。ゴール直前まで国学院大、日体大、青学大、城西大の4校が8位争いを繰り広げた。寺田氏はスパートを仕掛け、8位集団の先頭に立ったが、残り約120メートルの交差点で右折した中継車につられて曲がってしまった。約30メートルのロスで11位に転落。大ピンチから再度の猛ラストスパートで城西大を抜き返し、10位でゴールした。いまや強豪校となった国学院大の初シードは、あまりに劇的な展開だった。寺田氏がコースを間違えた大手町の交差点は、駅伝ファンの間では「寺田交差点」と呼ばれて定着している。

 寺田氏は2年生以降も着実に成長。国学院大のエースとして奮闘し、箱根駅伝で2年5区5位、3年2区15位、4年2区7位の戦績を残した。14年に卒業し、実業団のJR東日本に入社。20年の福岡国際マラソンでは2時間8分3秒の自己ベスト記録で3位と活躍した。今年2月の大阪マラソンを最後に現役を引退。その後はJR東日本の一社員として駅業務などに従事していたが、皇学館大からのオファーを受け、指導者としての道へ踏み出すことを決断した。

 皇学館大は17年に念願の全日本大学駅伝初出場を果たし、以来、6年連続で出場していたが、1枠をかけて争われた今年の全日本大学駅伝東海地区予選では名古屋大に惜敗して2位。7年連続の出場を逃した。まさに「曲がり角」に立つチームにとって「交差点」でのミスを切り抜けた寺田氏はまさに適任。寺田新監督の手腕が期待される。

 ◆皇学館大 1882年に皇学館が創設。1903に官立の専門学校に。40年、官立の神宮皇学館大に昇格。46年、連合国軍総司令部(GHQ)による神道指令により廃学。62年、皇学館大が開学した。駅伝競走部は2008年に陸上競技部から分離独立し、創部された。17年に全日本大学駅伝に初出場し、以来、6年連続で参戦。最高成績は17位(17、20、21年)。20年大会では川瀬翔也(現ホンダ)が2区で17人をごぼう抜きし、一時は4位を走った。

 ◆寺田 夏生(てらだ・なつき)1991年8月30日、長崎・時津町生まれ。31歳。時津中時代は野球部に所属しながら陸上、駅伝の大会にも参加。諫早高では3年連続で全国高校駅伝に出場(1年2区27位、2年6区8位、3年3区30位)。2010年に国学院大人間開発学部に入学。箱根駅伝に4年連続で出場(1年10区11位、2年5区5位、3年2区15位、4年2区7位)。14年に卒業し、JR東日本に入社。19年、福岡国際マラソンで4位。20年の同マラソンでは3位。23年に現役引退。家族は妻、長男。

スポーツ

個人向け写真販売 ボーイズリーグ写真 法人向け紙面・写真使用申請 報知新聞150周年
×