◆国際親善試合 日本代表6ー0エルサルバドル代表(15日・豊田スタジアム=観衆3万7403人)
開始3分で、この試合最大のテーマは崩れ去ってしまった。日本をリスペクトし、しっかり守備から入ってくる相手を崩す。昨年のカタールW杯では0―1で敗れた第2戦のコスタリカ戦でできなかったことを、同じく北中米カリブのエルサルバドル戦で取り組むはずだった。しかし開始1分にCKから先制すると、同3分には相手DFが退場し、11対10に。大量6ゴールのワンサイドゲームとなり、キャプテンマークを巻いたMF守田英正が「きょうの試合だけで評価するのは難しいですけど…」と苦笑いするのも当然だった。
守田が「メンバーを見てもらったらわかるように、より攻撃的にという狙いはあった」と語ったように、アンカーの位置に“デュエル王”遠藤ではなく、攻撃の組み立てに優れた守田が入り、相手を押し込んで崩す狙いがあった。インサイドハーフにも堂安、旗手を置いたことも、強固な守備をこじ開ける想定の上だったことがうかがえる。
しかし展開的に簡単にこじ開けられてしまったことで、最大のテーマに真っ向から取り組むことはできなかった。それでも森保一監督が「相手が11人でも崩せたと思う。準備してきたことをこの試合で表現できた」と語ったように、得点シーンでは狙いの形が出たからこそ、大量得点に繋がったと言える。
「評価が難しい」と皆が声をそろえる中で、収穫を挙げるとすれば、22年9月以来、9か月ぶりの代表復帰となったMF旗手怜央を挙げる。左インサイドハーフとして、効果的なランニングやパスでチャンスにスムーズに絡んだ。圧巻だったのは、後半9分のプレー。中央で左サイドへパスを出す体の向きから、右サイドのFW上田へラストパス。惜しくもオフサイドとなったが、その能力の高さが垣間見えたシーンだった。
旗手の近いポジションには、三笘や守田、谷口と川崎時代の元チームメートが固まっていた。「だからこそ、僕が自分の役割をこなせなかったら価値はない。そこは自分に課していたタスクでした。それができなければ、僕がいる意味はない」という重圧と戦っていた。得点やアシストがなかったことを悔やみつつ「足元だけじゃなく、ダイナミックな動きをしようと思っていた。そこが随所に出たのはよかった」と振り返った。
相手が10人となったこの試合は、選手達にとって大きなアピールにはならないのかもしれない。しかしこの試合でも活躍できなければ、今後チャンスが来る確率は確実に下がる。途中出場から代表初ゴールを挙げたFW中村敬斗も、得意のクロスに合わせるゴールをみせたFW古橋亨梧も、右サイドバックとしてそのゴールをアシストしたDF相馬勇紀も、代表生き残りに向けて必死だった。次戦はFIFAランク21位のペルー戦。20位の日本と肉薄する相手に対し、旗手ら“新戦力”にチャンスが回ってくる可能性が、わずかでも上がったことは確かだ。(金川 誉)