いつの間にか試合の一部として溶け込んだリプレー映像 2010年導入以降、ルール追加を経て日本でも成熟

スポーツ報知
リクエストを要求する新庄剛志監督

 交流戦前の最後の試合だった。5月28日、楽天・日本ハム戦(楽天モバイル)。1点リードの日本ハムは1死満塁のピンチを招くと、中犠飛で同点に追いつかれた。ここで新庄監督が、本塁のクロスプレーについてリクエスト。セーフの判定が維持されると、今度は三塁走者の離塁が早かったと、異例の1プレーに2度目のリクエストを行った。

 検証を終えた審判団はグラウンドに戻ると、場内に「ただいまサードのリタッチについてリクエスト検証しましたが、判定はセーフ。映像がなかったので、回数には数えません」とアナウンス。同点が確定し、新庄監督はベンチ前のフェンスを叩いて悔しさを表したが、映像がなかったことを認めリクエストの回数をカウントしないという審判団の判断は新鮮に映った。

 今月5日の実行委員会。この件が議題に挙がり、検証のための映像がない場合は審判員の判定を維持し、リクエスト回数にカウントしないことが明文化された。判断材料となる映像がない場合はないと言える、健全な状況となった。

 2010年の本格導入以降、細かいルールの追加や明文化を経て、日本のリプレー検証も少しずつ成熟してきた。各球場の映像を集約し中央で検証するMLBとは異なり、NPBは現場の中継映像が頼り。「ビデオ判定」が始まった当初は、中継映像を録画したものだけが判断材料だった。

 そもそも、始まった当初はモニターは球場に設置されていたものがそのまま使用され、録画機器も球場によってまちまち。ある球場では17インチ程度のブラウン管テレビが使用され、コマ送りにしてもボールが2つ見えるという絶望的な状況だったという。各球場で異なるため録画機器の操作ミスも起こり、あるとき録画した映像を再生すると、画面には国民的猫型ロボットが…。もちろんいずれの場合も、判定通りとして試合は再開されたはずだ。

 現在では中継技術の向上もあり、球場の大型ビジョンでもスーパースローや360度映像などが繰り返し流されるようになった。リプレー映像はショーアップされ、観衆にとっても盛り上がるポイントのひとつ。いつの間にか試合の一部として溶け込んでいることが、何よりの成功なのかもしれない。(遊軍・山口 泰史)

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