松井秀喜氏が“おかわり”の1球で届けた「野球の楽しさ」…記者コラム

スポーツ報知
松井秀喜氏

 笑顔で「楽しかったね!」と話す子どもたちの姿を見て、松井秀喜氏の思いが伝わったことを確信した。巨人やヤンキースで活躍した同氏が4月29日、G球場で小学生を対象に開催した野球教室を取材したときのことだ。

 「私のことを覚えているのは、保護者の方だけですね」と自虐的に語った同氏の現役時代を知る子どもはおらず、はじめのうちは表情も動きも硬かった。ところが教室が進み、打撃練習のコーナーにさしかかったあたりで雰囲気が変わった。

 自ら打撃投手を務めて「いい振りだね」などと声をかけながら投球。子どもたちは割り当てられた時間内でその球をフルスイングで打ち返す。制限時間が来ると、松井氏は「次、ラストね」と呼びかけてから投げるのだが、バットの芯で捉えられないと「もう1球いこう!」と声をかける。今度は快音を響かせた子どもが満面の笑みを浮かべるのを見届けて、次打者に回るように努めていた。

 その光景を見ていて、現役時代の打撃練習を思い出した。シーズン中の試合前のフリー打撃。与えられた時間内で複数の打者が順番に打つのだが、最後の1球を打ち損じたり、サク越えの当たりを打てなかったりすると、打撃投手に“おかわり”をお願い。胸のすく会心の当たりで締めてから本番に臨んでいた。

 「みんな、少しでも上手になりたいという意欲がありますから。野球教室に来てくれている子どもたちとは、その日の、限られた時間しか会えない。だから『参加して良かったな』とか『きょうはいい日だったな』と思って終わってほしい。そのためにも、練習の最後の1球は、いい打球をかっ飛ばしてもらいたいのです」と松井氏。減少する野球人口に「野球は楽しいスポーツと思ってもらうことがまずは大事」という気持ちは、現役時代からこだわる最後の1球で子どもたちの胸に届いた。(遊軍・阿見 俊輔)

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